気がつけば年末まで1か月余り。年が明ければ、BCN AWARDの授賞式がある。BCN AWARDは2000年から始まったそうで、式には私も毎年出席している。06年からはBCN ITジュニア賞が加わり、さらに楽しみが増えた。
文部科学省では、20年からの小学校でのプログラミング教育の必須化に向けた議論が進んでいる。プログラミング教育の必要性については、一般にも関心が高まっている。
プログラミング教育とは、子どもたちに、コンピュータに意図した処理を行うように指示できることを体験させながら、「プログラミング的思考」などを育むこととされる。私は、技法の習得だけでなく、子どもが論理的思考を学ぶことが意味のあることだと考えている。なぜなら、論理的思考はプログラミング以外の学習にも社会に出てからも役立つからだ。また、プログラムは著作物であるので、著作権を学ぶ契機になることも期待している。
絵や文章などと同様に、プログラムを作成した者が著作者となるが、プログラムが組み込まれたソフトウェア、アプリとしては、プログラムだけでなく、目に見える部分のキャラクター画像、音楽、映像といった他の著作物の集合体となる場合も多い。
つまり、ソフトウェア、アプリは、著作権によって多面的に保護されるが、プログラム部分以外のキャラクターや音楽など他人の著作物を利用する場合もあるだろう。
自分が創作したプログラムの保護を考えるうえでも、他人の著作物を自分のソフトウェアで利用するうえでも、著作権の知識が必要になる。プログラミング教育とともに、こうした面についても、ぜひ学んで欲しいと思う。
日本の著作権法に、プログラムが著作物として明記されたのが1985年。私がこの活動に参加して約30年が経つ。時代は徐々に変わっていると認識している。これから10年後、小学校でプログラミング教育が始まって以降のBCN AWARDやBCN IT ジュニア賞の受賞者がどう活躍していくのか。人工知能やビッグデータの時代が豊かで創造力に富んだ社会となるよう注目していく。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。