前回説明した、ブロックチェーン研究会の実証実験環境と実装した機能を踏まえ、報告書では検証結果をどうまとめているのかを紹介する。まずは、機能面、技術面の評価を中心に、内容をチェックしていく。(取材・文/本多和幸)
今回実装した、簡易的な振込業務を行うために必要な各機能については、「全て問題なく動作し、機能面においては今回定義したレベルの簡易的な振込業務に対しては、ブロックチェーン技術が十分に適用可能であることが検証された」としている。一方で、今回の実証実験は決済システムのなかのペイメントのプロセスのみに限定してブロックチェーンを活用したものだったことから、半ば当然ながら、「クリアリング、セトルメントとの連携方式や、より実業務に近い振込機能の実現方式などの検討に取り組むことで、実用化に向けてより精緻な検証結果を得られるだろう」とことわっている。
技術面でも、現段階では致命的な欠陥は確認されていないといい、実用可能性を確認できたと結論づけている。とくに性能については、1500件/秒以上のスループットを記録。全銀システムのピーク時の処理能力は1388件/秒であることから、「実運用に耐え得る水準が期待できることを確認した」としている。改ざん耐性やデータの完全性についても、必要な水準を満たした。ただし、レスポンスタイムや可用性、データの秘匿性などについては、「追加の検証が必要」という評価だった。
実運用に耐え得る性能、コスト削減の可能性も確認
コストに関する評価は、技術面に比べてやや詳細にまとめている。コストの試算にあたっては、コアノード(トランザクションの正しさを検証、承認してブロックを生成するノードで、信頼できる中立的な機関が担う)群に、144行分のアプリノード(トランザクションを生成するノードで、振込実施者である銀行が担う)を接続するという前提で、ブロックチェーンを使ってシステム構築した場合と、ブロックチェーンを使わずに従来技術でシステムを構築した場合を比較した。
その結果、コアノード群が担うトランザクションの検証、承認側のシステムで、「いくつかのコスト削減ポイントが抽出され、ブロックチェーン技術の活用により、システムコストが削減される可能性があることが確認された」という。
次回は、コスト削減ポイントをより詳細にみていく。