一般社団法人 コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事・事務局長 久保田 裕
略歴

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
DeNAが運営する「WELQ」や「MERY」といったキュレーションサイトにおいて、記事内容に問題があると相次いで指摘されたことにより、昨年12月、経営陣が謝罪しこれらのサイトを非公開とする事態となった。さらに、他社の同様なサービスにおいても記事の取り下げが広がった。問題点は大きく二つ。一つは、健康問題を扱うサイトで健康被害を招きかねない誤った医療情報が掲載された可能性があったこと。二点目は、多くの記事の無断転載が指摘され、加えて同社が作成した記事の作成マニュアルにおいては、他社のサイトを参考にし、同じ文章とならないよう語尾の修正を推奨するかのような内容であったことだ。
このうち二点目について、いうまでもなく著作権法では他者の著作物を利用する際には著作者から許諾を得なければならない。確かに著作権法で認められた「引用」であれば許諾なく利用できるが、引用の要件は条文上求められる要件が明確でないため、引用として利用しても、引用元の著作者から無断利用の指摘がなされるおそれもあり、ビジネスにおいて引用利用を行うことはリスクが伴う。一方、著作権は表現を保護するものであるため、同じ内容を著した文章であっても表現が異なれば別の著作物として保護される。ただし、元の文章の「てにをは」を変えた程度では別の著作物とは評価されず、元の文章の複製に過ぎない。果たして記事作成マニュアルにおいて、著作権に関する適切な指導がなされていたのだろうか。
なお、今回非公開となった問題のサイトで記事を書いていたライターの原稿料は、1000字あたり300円から500円であった。この条件ゆえ、ライターは自ら取材したり医療情報をもとにしつつ自分なりの表現で書かず、他サイトの表現をコピーしたうえで大量に記事を作成してしまったのかもしれない。
今回の件は、ACCS会員でもあるDeNAが起こした問題であり、会員企業に対する啓発活動が十分でなかった点を深く反省している。同社とは今後共同で著作権について社内理解を深める活動をしていきたいと考えている。また、本件を襟を正す機会として、著作権知識の普及啓発活動をより一層進めていく所存である。著作権教育でお困りの企業もぜひ当協会をご活用いただきたい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。