山形県天童市に本社を置くレクポートは、安価で使い勝手のいい業務アプリケーションをSaaS方式で提供している。“翌日に出せるアプリ”を略して「ヨクデル」と命名。在庫管理や就業管理、従業員管理などの複数の業務SaaSをまとめたもので、中小企業が手軽に使えるよう設計した。同社では独自の開発フレームワーク「Starmine WebAP(スターマイン・ウェブエーピー)」によって開発生産性を大幅に向上。カスタマイズの対応を可能にしつつ、開発コストを抑えているのが特徴だ。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 レクポート
所在地 山形県天童市
資本金 1865万円(資本準備金含む)
設立 2000年10月
従業員数 約10人
事業概要 レクポートは、独自の開発フレームワーク「Starmine WebAP(スターマイン・ウェブエーピー)」活用して、さまざまなウェブアプリケーションやSaaS型アプリを開発しているSIerだ。JASIPA(日本情報サービスイノベーションパートナー協会)加盟社。
URL:http://www.lecport.com/
100サービス超の受注を獲得

中丸孝一
代表取締役
レクポートは、独自の開発フレームワークStarmine WebAPを駆使し、さまざまなアプリケーションを開発している。さらに、同社独自のアプリケーション群として「StarmineBiz(スターマイン・ビズ)」シリーズを開発。カスタマイズ対応や機能追加も可能で、労務管理やクラウド型タイムカードシステム、日報管理システムなどを品揃えしてきた。
ゼロから手組みでつくるのではなく、自社の開発フレームワーク上に、核となる業務アプリを構築する手法により、ソースコードを改修しなくてもカスタマイズ対応や機能追加できるようにしたことで、「迅速、低コストで利用できる」(中丸孝一代表取締役)ように設計している。
StarmineBizの業務アプリのうち、SaaS方式で利用できるサービスを「ヨクデル」シリーズと命名。「翌日から出せるアプリ」を略したもので、直近では在庫管理や就業管理、従業員管理などをラインアップしている。StarmineBizシリーズは2010年から本格的に立ち上げ、16年末までにおよそ50社、100サービスを超える受注を獲得。安価で使い勝手のいい業務アプリで、SaaS方式でも利用できる点が評価され、ユーザー数を順調に増やしている。
独自のフレームワークを開発
中丸代表取締役がかつて製造業の電算室で勤務していたとき、勤務地だった山形の地場の中小企業のIT化を身近でみてきた。1990年頃のパソコンはとても高価で、「業務ソフト込みの価格は500万円くらいした」と振り返る。このとき「もっと安く、手軽に業務アプリを使えるようにすれば、中小企業のIT投資の負担が軽減され、業務改革も一段と進む」と感じたことがレクポートの起業、創業の精神につながっている。
脱サラして起業したのが2000年。客先常駐の仕事をしながら考案した開発手法がコンテンツ管理システム(CMS)を使って簡易なウェブアプリをつくることだった。ちょうど国が高度IT化を推し進めるe-Japan戦略を実施しているタイミングもあり、関連の補助金を活用しながら独自に開発。このCMSをさらに開発フレームワークへと発展させたのがStarmine WebAPである。
実は、一時期、請け負い開発も手がけたこともあったが、レクポートのような比較的小規模なSIerが開発を請け負ってしまうと、それにかかりっきりになってしまい、「リスクが高い割に収益性が上がらない」課題に直面してしまった。Starmine WebAPも万能ではなく、業務アプリの内容によって得意、不得意がある。それなら、Starmine WebAPの得意分野に集中し、必要に応じてカスタマイズで対応するようにすれば、本来、中丸氏が目指していた早く、安く業務アプリをつくれるようになると考えた。
内部統制の強化支援にも着目
Starmine WebAPを駆使して開発した労務管理やタイムカード、日報管理などをシリーズ化したのがStarmineBizシリーズで、SaaS型ですぐに使えるようにしたヨクデルシリーズも取り揃えた。あらかじめStarmine WebAPで開発したウェブ型の業務アプリを核としてカスタマイズに対応したり、SaaS型でそのまま顧客に使ってもらったりすることで、中小企業が求める使い勝手のいい業務アプリを手頃な価格でユーザーに届けられるようになった。
StarmineBizシリーズで、今、力を入れているのが内部統制の強化や、環境整備を支援するシステムである。いわゆる日本版SOX法に準拠した内部統制の強化を支援するもので、新興株式市場への株式上場を目指すスタートアップ企業や、海外上場会社の日本法人、中小企業の業務改善目的での利用を念頭に置いている。
国内で株式上場しているような大手企業は、すでに一通り日本版SOX法に準拠した対応を行っているが、ここ数年、起業ブームが再燃していることや、国内へ進出する海外企業が一定数存在していることから同商材を開発。内部統制の強化には、どうしても手間や費用がかさんでしまう傾向がみられるが、「できるだけ使い勝手のいい仕組みで内部統制の強化を支援していく」ことを主眼に置く。
レクポートでは、こうした商材を意欲的に増やしていくことで、ビジネスを伸ばしていく方針を示している。