ユーエスエスは、金融や流通・小売業向けのシステム開発に強いSIerである。創業期から「元請け」受注を重視。1970年代当時、中小システムベンダーではまだ珍しいOHPを使ったプレゼンテーションによる提案型営業を実践してきた。90年代からは業界に先駆けて自社開発の業務パッケージをベースとするSIに参入している。今後はシステムによる「効率化」から「快適さ」をより重視する提案へとシフトすることで、競争力を一段と高めていく方針だ。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 ユーエスエス
所在地 東京都港区虎ノ門
資本金 5000万円
設立 1972年創業(75年に株式会社に改組)
従業員数 約130人(連結)
事業概要 ユーエスエスを中核に、酒販店POSシステム開発を手がけるザ・コンピュータ、金融向けシステム開発に強いエーシーイーの三つの事業会社で構成される。グループ売上高のうち、金融業向けと流通・小売業向けの売り上げがほぼ半々を占めている。東京都情報産業協会(IIT)加盟社。
URL:https://uss.co.jp/
OHP使って提案型営業を実践
創業者の與良博和氏(現名誉会長)が、72年に脱サラして起業した当初から「元請け」受注にこだわってきた。「最初は単純に下請けで使われるのが嫌だった」(與良名誉会長)といい、起業当初からエンドユーザーに向けてOHPを駆使したプレゼンテーションを実践。銀行系やコンピュータメーカーの顧客を紹介してもらったりして、元請け案件を獲得してきた。元請けで受注するには、顧客に直接「提案」する必要があり、提案して受注に結びつけるノウハウの蓄積こそが、ユーエスエスの成長の原動力になった。
実際に元請けで仕事を始めてみると「今、自分たちが手を止めたら顧客はサービスを始められない」という責任感、あるいは存在感のようなものが、「モチベーションの向上につながった」と振り返る。とはいえ、「元請け/一括請負」の契約形態は、「二次請け、三次請け、客先常駐」といった形態よりも失敗したときのリスクが高く、起業まもない中小SIerの多くは二の足を踏んでしまう。與良名誉会長は、「当時は若かったし、無鉄砲で、どうなっても女房くらいは食わせていけるだろう」と、新規の顧客開拓、案件獲得に邁進していくことになる。
今でこそ提案型の営業は珍しくないが、70年代、起業まもない中小SIerがエンドユーザーにソフト開発でプレゼンテーションする取り組みは、時代の最先端をリードするものだった。
独自のパッケージでSIを拡大
90年代、オープン環境が普及するなかで、ユーエスエスは業界に先駆けてカスタマイズが可能な独自業務パッケージビジネスに進出している。パッケージをベースとしたほうが、コスト削減や納期短縮がしやすく、提案の強みも増すからだ。
「元請けでビジネスを伸ばすには、顧客以上に顧客が属する業界のことを知らなければならない」というのが與良名誉会長の持論であり、業務パッケージにも、持てる業務ノウハウのすべてを凝縮した。最初に立ち上がったのが流通・小売業向けの業務パッケージで、今の小売業・卸業向けの販売管理システムで主力商材の一つである「Compiere(コンピエール)」につながっている。
與良 剛
代表取締役社長
13年には、二代目社長の與良剛氏がトップに就任。「Compiere」と、メガネ販売店向けの店舗・本部販売管理システムの「メガC→(メガシー)」、タブレット端末を駆使したPOSレジシステム「NEXPO(ネクスポ)」などを主力とする商材ポートフォリオの強化に一段と磨きをかけてきた。
元請け中心のSIも手がけるとともに、グループ会社も増やした。與良社長がユーエスエスに入社した09年には、酒販店POSシステム開発に力を入れるザ・コンピュータ、14年には金融向けシステム開発に強いエーシーイーをグループに迎え入れ、実質的な持ち株会社のネクストフューチャーの傘下に、ユーエスエスをはじめとする事業会社が並ぶかたちに組織を拡大させている。
働きやすさ、収益貢献を重視
與良社長は、創業期からの提案型の営業スタイルや元請けへのこだわり、業務パッケージ開発をさらに進化させるかたちで、顧客の利益を増やしたり、気持ちよく働けるようにするシステム提案に取り組んでいる。キーワードで表せば「効率から快適へ」と変えていくスタイルであり、従来の効率指向のシステム化から、快適に仕事をこなし、利益にも貢献するシステム化を重視している。
例えば、タブレット端末を活用するPOSレジ一つを挙げても、POSレジを安く導入できるメリットよりも、むしろタブレット端末によって接客しながら会計処理することで、接客時間を増やしたり、店舗スタッフがより快適な仕事をこなせるメリットを前面に押し出した提案を行っている。また、タブレット端末は従来のPOSレジに比べて、文字や画像などさまざまな情報入力が容易であることから、店舗の生の声を集約して機械学習させることで新しい気づきや、収益力強化につなげる機能を今後拡充していく。
パッケージやSIサービスをただ売るのではなく、それによって顧客の利益が増えたり、気持ちよく働けるようにすることでビジネスを伸ばす。