一般社団法人 コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事・事務局長 久保田 裕
略歴
久保田 裕(くぼた ゆたか)

1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
新年度が始まって一月以上が経ち、新入社員も研修を終えて現場に配属された頃だろう。新人研修といえば、業種や職種にもよるが、昔は名刺交換や身だしなみといった社会人としての基礎的なことに加え、電話の受け方やFAXの送り方を教わった。現代であればメールの書き方やSNSなど、ネット上でのふるまいに関する内容も必要だろう。
社会人が仲間との悪ふざけや、有名人が来店したといった内容をSNSに投稿した結果、本人ばかりか会社もネット上で「炎上」する事件が後を絶たない。ツイッターには匿名で参加しているのが一般的だろうが、その人の過去の投稿内容などから身元が特定されている。たとえ業務に関係していない書き込みであっても、こうした不祥事を社員が起こすことは企業としては絶対に避けたい。そのため、新人研修においてネット上のふるまいに関する指導は、企業にとって今や必須だ。気になるのは、そのときに著作権に関する内容も含めているかどうかだ。
確かに、私が著作権の啓発活動を始めた30年前と比べると、著作権に関する一般の方の意識は向上した。正規品が高いからとうそぶいて違法コピーされたコンピュータソフトを業務で使用する会社はほぼなくなり、著作権侵害はいけないというルールは一般的になったといえよう。
しかし、知識不足によって著作権侵害を起こしてしまうリスクはゼロではない。例えば、ある社員が動画投稿サイトにテレビ番組を違法に投稿したり、音楽動画をSNSで多数違法公開したりすれば、業務外のことであったとしても、勤務先が判明すれば会社も炎上に巻き込まれるだろう。
新入社員が学生気分のままやってしまった著作権侵害が、ある日、SNSを通して企業名とともに突然クローズアップされる。そんな悪夢のシナリオは十分に起こり得るのだ。
キュレーションサイトの事件をあげるまでもなく、業務上での著作権侵害も避けなければならない。だからこそ、研修段階に限らず、定期的に著作権教育を行う必要がある。そのためには、先輩社員こそ著作権の知識が必要といえる。ビジネス著作権検定なども活用しつつ、業務はもちろんのこと、日常生活にかかわる著作権の知識も身につけていただきたい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。