『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。
日本オラクルが6月5日、トップの交代人事を発表した。代表執行役社長CEOだった杉原博茂氏が、代表権のない取締役会長に就き、CEOにはフランク・オーバーマイヤー氏が就任した。オーバーマイヤー氏は、2015年2月に独オラクルに入社。直前までテクノロジー・セールス・ビジネス・ユニットのバイスプレジデントを務めていた。日本との縁は浅そうだ。代表執行役には、チーフ・リーガルオフィサーの金子忠浩氏が就任した。
杉原氏は社長に就任後、同社の事業をクラウドへと大きく舵を切る役割を担った。グローバル大手では最後発だが、「2020年までに日本市場においてNo.1クラウドカンパニーになる」ことを目指している。杉原氏が社長に就任したのは、14年4月1日。志半ばのはず。
実は13年8月にも、日本オラクルで似たパターンの社長交代劇があった。当時社長だった遠藤隆雄氏は代表権のない会長に就任し、英国出身のデレク・エイチ・ウイリアムズ氏(故人)が社長に就任。このときも代表執行役には、金子忠浩氏が就いた。デジャヴである。
日本オラクルが3月に発表した第3四半期決算短信によると、前年対比で増収増益ながら伸び率が鈍化。クラウドは倍増だが、まだ売り上げの5%程度。数字をみる限り、厳しい状況にある。20年までの残り期間を考えると、社長交代のタイミングだったのかもしれない。インタビューでは、つい本音を言ってしまう杉原氏。記者にとっては憎めない存在だった。今後の活躍を期待したい。
大手企業は人材が豊富なため、次期社長人事はスムーズだ。問題は、創業社長が長年続けている中小SIer。とくに下請けがメインだと、経営を教える機会が少ないため、後継者が育っていないとの声を聞くようになった。とくに地方に多い。時代は地方創生である。魅力的な地域には、若者が集まるようになった。課題は地域に定着してくれるかどうか。社長を担う人材なら、地域のリーダーとしての役割も果たしてくれそうだ。グローバル大手で活躍した杉原氏が、地域の中小SIerのトップに就く、なんてことも期待したい。
オラクルの共同創業者、ラリー・エリソン会長は、現在も第一線で指揮を執っている。重鎮である。クラウドに苦闘中のオラクルだけに、後継者問題が頭をよぎる。
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。