前号で説明したとおり、TISは昨年、デジタルガレージと共同でFinTech関連事業の技術開発を担う新会社「DG Technologies」を立ち上げ、カナダのブロックストリーム社の技術をベースにブロックチェーンの活用を模索し始めた。この動きの背景を探った。(取材・文/本多和幸)
TISで、デジタルガレージとの協業やブロックチェーンを活用した新規事業開発を主導している音喜多功・ペイメントビジネス事業本部ペイメントソリューション事業部副事業部長は、「もともとFinTechというキーワードに対して、TISが後れを取っているという危機感はあって、マーケットが盛り上がるなかで何か手を打たないと、という社内での流れはあった」と振り返る。
そんななかで、ブロックチェーンに着目した理由は何なのか。「ブロックチェーンそのものについては、まだまだこれからさまざまな検証を重ねていかないといけない段階であるにせよ、コストを考えると、私が所属するペイメント、決済の領域でもプラットフォームが置き換わっていくのは揺るぎないことに思えた」と、音喜多副事業部長は話す。より具体的には、「ペイメントの領域での主力アセットは、カード会社向けのデビットカード、プリペイドカードのサービス。社内の議論でも、ポイント交換サービスなどと連携させていくことなどを考えると、プラットフォームはブロックチェーンがいいよね、ということになった」と話す。
ちなみに、社内には独自にブロックチェーンの情報収集や勉強をしていたエンジニアももともと多数存在し、社内でブロックチェーンの勉強会を開いたところ、約90人が集まったという。
ブロックストリームとの協業に大きな魅力
音喜多功
ペイメントビジネス事業本部
ペイメントソリューション事業部
副事業部長
こうした背景があって、TISからDG Technologiesへエンジニアを派遣し、ブロックチェーン技術の知見を蓄積するという流れになっていくわけだが、そもそも、なぜデジタルガレージを協業相手に選んだのだろうか。これについては、デジタルガレージが出資し、技術開発でも密接な協業関係を結んでいるブロックストリームの存在が大きかった。前号でも説明したとおり、ブロックストリームには、ビットコインのコア開発者が多数在籍している。音喜多副事業部長は、「ブロックチェーンは、ビットコインの存在なしには語れない。ビットコインのコア開発者と協業して技術開発を行うことで、日本の限られた市場で活躍するにとどまらないブロックチェーン・エンジニアの育成ができるのではないかと考えた。実際に半年以上協業してきて、成果が出てきている」と手ごたえを語る。(つづく)