TISは、ビットコインのブロックチェーン拡張技術としてサイドチェーンを開発したカナダのブロックストリーム社の技術にフォーカスしている。これは、同社がパブリック・ブロックチェーンにこそブロックチェーンの真価を見出していることの証でもある。(取材・文/本多和幸)
国内では、ビットコインに代表される「パブリック・ブロックチェーン」ではなく、許可されたノードのみがアクセスしたり、合意形成に参加できる「パーミッションド・ブロックチェーン」の実用化に関する検討が目立つというのは、これまでの連載でも説明したとおりだ。しかし、TISの音喜多功・ペイメントビジネス事業本部ペイメントソリューション事業部副事業部長は、「(ブロックストリームとの交流により)ビットコインのコア技術者の考え方に触れてみると、パーミッションドの世界は別物という認識になった。個別の機能追加や認証系などで追加のコストもかかる。それでも、現在のシステムとの想定的な比較でパーミッションド・ブロックチェーンにコストメリットがあるとみて、プラットフォームの置き換えを検討している事例はかなり見受けられるが、それはブロックチェーンの本質ではないと思っている」と話す。
さらに、パーミッションド・ブロックチェーンの代表格であるIBMが主導するハイパーレジャー・ファブリックなどを念頭に、「大手メーカーの昔ながらの垂直統合型ビジネスモデルに組み込まれるような技術に注力しても、現時点ではSIerとしてメリットはない」(音喜多副事業部長)ともみている。
地域通貨や自治体の
独自ポイント流通で威力を発揮
音喜多功
ペイメントビジネス事業本部
ペイメントソリューション事業部
副事業部長
現時点でTISがフォーカスしているのは、パブリックブロックチェーンを活用した地域通貨や、自治体の独自ポイント発行・流通などの地方創生策だという。音喜多副事業部長は、次のように説明する。
「当社のデビットカード関連システム・サービスのユーザーは地銀が多い。地銀は地元の自治体と密接に連携していて、自治体向けに地域の経済活性化に向けたさまざまな仮説提案を繰り返しやっている。例えば、自治体が発行する健康ポイントなどはなかなか活用されないという課題があるが、独自の地域通貨を発行してこれを連動させ、使える場所も増やす仕組みをつくることで、ポイントの価値を上げ、ポイントを貯めるインセンティブを与えることもできるようになる可能性がある。パブリック・ブロックチェーンの技術を使えば、非常に安価にこうした仕掛けをつくることができそうだし、実証実験も手軽にできる。こうした提案は、すでにいくつか実例が出てきている」。(つづく)