効率化やコスト削減による業務の改善を期待し、AIを導入する企業が多い。NECも顧客とともにAIによる業務効率化に取り組むとともに、AIを活用した新たなビジネス創出も模索している。(山下彰子)
NECの「RAPID機械学習」は前号で紹介した事例のように画像分析に強いモデルや、マッチングに特化したものなど、複数のラインアップをもっている。今回は、エンタープライズ向けにマッチングに特化したRAPIDを導入した事例を紹介する。
2016年8月に導入し、実証実験を行ったのは横浜銀行(川村健一頭取)だ。導入はカードローンのプロモーションのためで、RAPIDを活用して顧客分析を行い、推奨顧客リストを作成した。従来、推奨顧客リストは年齢、性別、家族構成などから対象者を絞り込んでいた。
RAPIDを活用した分析では、上記のデータに加え、取引、資産状況など、約30万件の顧客情報をRAPIDに学習させ、分析モデルを作成し、推奨顧客をリスト化した。実証実験の結果、精度を変えずに分析作業を効率化することができ、作業工数が約60%削減した。また、従来は抽出できなかった顧客とカードローンの組み合わせを発見することができ、顧客のカバー範囲の拡大につながったという。
顧客の新規獲得ではなく、顧客の満足度を上げ、リピーター率を高めるため、AIを導入しようと取り組んでいるのがオンライン英会話サービス事業を運営するレアジョブ(中村岳社長)だ。Skypeを使った英会話サービスなので、気軽に受講できる点が特徴だが、顧客の受講回数を増やすことが課題となっている。そこで、会員の満足度を高めるため、講師と会員のマッチング高度化のためRAPIDを導入した実証実験を実施した。
実験では、会員のなかからランダムに抽出した約2万人分の年齢、性別、学習期間、英会話レベル、過去のレッスンに対する評価などのデータや、講師の年齢、性別、講師歴、レッスンスキルなどのデータをもとに、ユーザーの総合的な満足度をAIが推定し、ユーザーと講師の適した組み合わせを策定した。今後はレアジョブが保有するレッスンデータや英会話力を測定できる「レアジョブ・スピーキングテスト」の受験データなどの教育ビッグデータをもとに、AI技術を活用した英語学習の習慣化・質向上のための仕組みづくりに取り組んでいくという。
企業の業務を効率化するだけではなく、顧客の満足度向上にも利用され始めているNECのAI技術。今後ますます身近な存在になっていきそうだ。