TISのブロックチェーンビジネス戦略を探る第4弾。音喜多功・ペイメントビジネス事業本部ペイメントソリューション事業部副事業部長は、ブロックチェーンを取り巻く現在の市場の状況について、懸念と課題も感じている。(取材・文/本多和幸)
音喜多功
ペイメントビジネス事業本部
ペイメントソリューション事業部
副事業部長
ブロックチェーン、とくにパブリックブロックチェーンの利点について、音喜多副事業部長は、「やはり一番はコスト」だと言い切る。「パブリックブロックチェーンを使うのに向かないシステムも多数存在するにせよ、既存のシステムやプラットフォームを低コストで置き換えて、同等以上のセキュリティも確保できる可能性があるのは、大きな魅力」と説明する。
ただし、まだまだ実用化、商用化までには時間をかけるべきだとも感じているという。
「とくにパブリックブロックチェーンの領域では、商用化を急ぎ過ぎているという懸念がある。ブロックチェーンがインターネット以来の革新的な技術であるというのは個人的に賛成だが、インターネットは、軍事利用をきっかけに研究が始まり、商用化されるまでの間、アカデミーの世界で長い期間検証を重ねてきている。しかし、ブロックチェーンにはそのプロセスがないままに、時流の勢いに乗って、いきなり商用化の段階に飛ぼうとしている。とくにパブリックブロックチェーンは、汎用的なITプラットフォームとして活用することを考えると、まだまだ検証の時間が必要」。
いまのフェーズでは
研究機関との連携が大事
TISは、こうした市場の状況を冷静にみながらも、先行してブロックチェーン・エンジニアを育て、いざ市場が大きく花開こうというタイミングで、いち早くビジネスを立ち上げられるように準備をしているのだという。
音喜多副事業部長は、「黎明期だからこそ、アカデミックな情報が入ってくる環境にいることが大事。デジタル・ガレージとの協業は、その意味でも大きな意義があり、重要だと思っている」と話す。マサチューセッツ工科大学教授・MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏は、デジタル・ガレージの取締役・共同創業者でもある。また、慶應義塾大学の村井純・環境情報学部長(教授)がDG Labのエグゼクティブ・アドバイザー、MITメディアラボの松尾真一郎・研究員が同アドバイザーを務めている。
とくにMITとの結びつきは強固で、「彼らと情報連携ができるのは、他のITベンダーに対して大きなアドバンテージになっている」(音喜多副事業部長)と、手ごたえを感じているようだ。