「継続課金モデル」と「目利き力を生かしたSI」の二つを収益の柱にする――。こう話すのはユニケソフトウェアリサーチ(亀田裕文社長CEO)の中西佐登司執行役員である。前者はパッケージのライセンス売りからの移行、後者は単純な受託ソフト開発からの脱却を念頭に置いた発言だ。顧客の売り上げや利益に、より直接的に役立つよう、自らのビジネスを変革。ユニケソフトウェアリサーチはこうした取り組みによって競争力を高めている。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 ユニケソフトウェアリサーチ
所在地 東京都渋谷区
設立 1985年
資本金 2000万円
従業員数 約80人
事業概要 調剤薬局に強いSIer。レセコンや薬歴管理といったパッケージソフトも多数開発。中西佐登司執行役員はSI業界の豊富な経験を生かして、業界団体のJASIPA(日本情報サービスイノベーションパートナー協会)副理事長ICTビジネス委員会委員長も務めている
URL:http://www.unike.co.jp/usr/
パッケージ購入の 煩わしさをなくす
ユニケソフトウェアリサーチは、調剤薬局向けの業務パッケージソフトやシステム開発に強いSIerだ。薬局で使うレセコンや薬歴管理といったシステムは、規制対応の手直しが定期的に発生する。従来は保守契約の範囲内で対応したり、パッケージソフトであればバージョンアップでギャップを吸収したりしていた。
中西佐登司
執行役員
しかし、クラウドサービス全盛の今では「さすがに時代遅れ」(中西執行役員)と指摘。自ら率先して「継続課金モデル」へと移行し、直近では「売り上げの約半分は継続課金モデルへとシフトしている」と話す。バージョンアップのたびにライセンスを新規に購入したり、保守契約を新たに結んでもらうコストを平準化。バージョンアップの煩わしさをなくすことで、利便性や顧客満足度の向上に努めてきた。
継続課金モデルは、同じく課金型のクラウドサービスとの親和性も高い。オプションサービスでクラウドサービスと連携させたり、「システムそのものをクラウド側へ移行するサービスメニューも組み立てやすくなる」と話す。クラウド移行では、例えば小売りチェーン店では、各店舗間で顧客情報を共有し、クラウド側で横串を通して分析。データの有効活用によって、小売店の品揃えや出店計画といった事業戦略に役立て、顧客の売り上げや利益に直接的に役立つサービスをつくりやすくなる。
また、これまで本部システムで取りまとめていた情報をクラウドで管理すれば、災害時のBCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)にも対応しやすくなるメリットも見逃せない。ビッグデータ分析やAI(人工知能)などの新しいサービスは、クラウドに優先して対応することが多い。クラウド化は最新のサービスとの連携を促進する効果もある。
顧客が稼げるようにするのが
正しいSI
一方で、個別のシステム構築(SI)で対応しなければならないケースが依然として多いことも事実だ。調剤薬局向けのレセコンや薬歴管理など、規制対応する業務領域は、パッケージソフトやアプリケーションサービスの方式が適しているとしても、それ以外の各社個別の業務領域については、個別SIのほうが投資対効果が大きいケースも少なくない。
実際、国の薬価改定や在宅医療の方針など、薬局を取り巻く事業環境は大きく変化している。全国5万店舗あまりある薬局は小規模経営が多く、今後、再編によって大規模化し、収益力を高めようとする動きが一段と活発化。大規模化すれば、競争力を高めるためのシステム開発への投資余力も大きくなり、個別SIの案件も増えることが期待される。
ここでSIerに求められるのは、様変わりする事業環境で顧客が勝ち残るのに役立つシステムをつくれるかどうかだ。投資対効果を着実に高めて、顧客がライバル他社より有利にビジネスを進められるよう、「世の中にある最新の技術を目利きして、SIに生かす力量」(中西執行役員)が試される。
顧客の出した要件に対し、大したアイデアもないままにシステム化するのではなく、顧客のビジネスを深く理解し、競争力を高めるための価値を加える。なおかつクラウドをはじめとする共有型のサービスを有効活用することで、できる限りコストも抑える。SIer自身の収益力も大切だが、顧客に「より多く稼いでもらえる提案でなければ、個別SIのビジネスは先細りになりかねない」と危機感をもつ。
パッケージソフトや個別SIに共通していえるのは、売りっぱなし、つくりっぱなしでは、これからのデジタル/クラウド時代には通用しないという点だ。「ユーザーの利益にがっつり貢献するためにどうあるべきかの議論を深めていくことが大切」と話している。