神戸市の三宮に本社を構えるアイクラフトは、国内外に拠点を増やして、それぞれの地で「地域に根差した情報技術者集団」をモットーにビジネスの拡大を図ろうとしている。兵庫県の姫路や東京、大阪に事業所を構えているほか、ベトナムやミャンマー、モンゴルなどでサービスを提供する体制を整えている。グローバルに通用するよう、社員に対する教育を徹底的に行っているほか、海外留学生の採用など、人材強化に取り組んでいる。日本企業だけでなく、海外企業をユーザーとして獲得することにも力を入れている。(取材・文/佐相彰彦)
Company Data
会社名 アイクラフト
所在地 兵庫県神戸市
設立 2001年1月
資本金 7000万円
従業員数 約45人(単体)
事業概要 システムの運用保守、ネットワークからソフトウェアまでのシステム構築を事業の柱に据える
URL:https://www.icraft.jp/
会社自体のあり方を変えていく
山本裕計
代表取締役
アイクラフトは、システムの運用保守、ネットワークからソフトウェアまでのシステム構築を事業の柱に据えている。サポートをメニュー化した訪問型の「iSTAFF」は、30分で駆けつけたり、他社から導入したIT機器でもサポートしたりするなど、手厚いサポートが好評だ。他社とパートナーシップを組んで提供地域を拡大しているほか、データセンターに適したメニュー「iSTAFF24」を提供。低コストという点も、他社との差異化要素になっている。
ただ、メイン地域の関西が厳しく、ユーザー企業のIT投資意欲が低かったこともあり、2016年度(16年12月期)の売り上げは単体で約3億6000万円(前年度は約4億円)と減少。「既存ビジネスが減少しているのは否めない」と山本裕計代表取締役はかみ締める。
一方、スーパーコンピュータに関する運用や利用者への教育、東京でのビジネス、ベトナムでのアウトソーシングなどの新しい分野でビジネスは順調に推移。日本企業の海外進出を支援する子会社のアイクラフトJPNを含めた連結での売り上げは、16年度に約4億8000万円と微増だが成長した。
このような状況から、「今後は、新規分野に次々と着手していきたい」との考えを示している。新規分野として描いているのは、グローバルビジネスの拡大だ。海外での取り組みは、現段階で日本企業の海外進出を支援することがメイン。日本と同様のサポートを提供する「iSTAFF VN/MM」は、ベトナムやミャンマーに進出している日系企業から高い評価を受けている。また、不動産仲介や人材紹介、貿易仲介など、ベトナムやミャンマー、モンゴルとのビジネスマッチングをサポートするビジネスも好評。これらのビジネスを継続しながら、「今後は、海外企業をユーザーとして獲得することも狙う」としている。
インターンシップに積極的
海外のユーザー企業を獲得するため、積極的に行っているのは、海外留学生を中心とした外国人の採用だ。「多くの案件が、さまざまな場所に眠っている」というのが、グローバルビジネス拡大の理由だが、案件獲得には英語での交渉が最低限必要となる。「英語でのビジネスを普通にこなせるよう、会社自体のあり方を変えていく」。そこで、日本語と英語を併用する環境を整えようとしている。
現在、アイクラフトのなかで外国人の社員は1割程度。まだ少ないものの、「新入社員は、日本人と外国人を半々で採用した」という。インターンシップでモンゴル人の海外留学生を受け入れて採用。「海外留学生のネットワークによって、当社が採用していることが口コミで広がれば人材採用の幅が広がる」としている。
また、モンゴルだけでなくベトナムやミャンマーの人材も日本で働きたいというケースが多い。「リファラル採用(社員の友人・知人などの人脈を活用した採用)も含めて、さまざまな方法で外国人の人材を増やしていく」との方針を示している。
売り上げ5億円規模を見込む
徐々にグローバル化に取り組んだ結果、海外企業からの受注は2000万円規模に達している。山本代表取締役は、「18年は5000万円は見込めるのではないか」と捉えている。
17年度の売り上げは、連結で5億円強、単体で4億円弱と前年度を上回る見込みだ。グローバルビジネスに力を入れながら、関西の景気がよくなれば、関西のユーザー企業に向けたシステムやネットワークの運用、構築などの既存ビジネスも回復するようになる。そうなれば、アイクラフトの会社規模は拡大していく。
山本代表取締役は、「国内外に拠点を増やして、それぞれの地で『地域に根差した情報技術者集団』をモットーにビジネス拡大を図る」としている。もちろん、本拠地である神戸IT市場の活性化に向けた取り組みについても進めており、兵庫・神戸地域を中心に100以上の企業や団体が会員として参加する「地域ICT推進協議会」で山本代表取締役は副会長を務めており、会員企業の実ビジネスにつながる策についても模索している。