スキルインフォメーションズは、中小企業向けのSI事業を重要な柱の一つに位置づけている。ターゲットエリアは本社を置く大阪を中心とした関西エリア。「地場の中小企業の売り上げや利益が増えれば、IT投資も増える。巡り巡って当社が活躍する市場も大きくなる」と、杉本浩代表取締役社長は話す。起業当初は必ずしも今のような業態ではなかったが、中小企業が抱える課題を目の当たりにしたことがきっかけで、SIのビジネススタイルを大きく変えてきた経緯がある。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 スキルインフォメーションズ
所在地 大阪市東淀川区
設立 1986年4月1日
資本金 9500万円
従業員数 約70人(連結)
事業概要 創業33年目の老舗SIer。SI事業では地場の中小企業に密着したビジネスを展開。一方で、医療・介護向けの業務パッケージを開発・販売するなどSIとパッケージの両事業をバランスよく伸ばしている。日本情報サービスイノベーションパートナー協会(JASIPA)会員会社で、杉本浩代表取締役社長はJASIPA副理事長兼関西支部長を務めている
URL:https://www.sic-net.co.jp/
SI事業の多角化へと舵を切る
杉本浩 代表取締役社長
スキルインフォメーションズは、1986年、組み込みソフト開発を事業の柱として起業したSIerである。起業当初は、警察などの公共機関向けに道路信号機の制御や、家電製品向けの組み込みソフト開発を手がけつつ、90年代後半から徐々に業務システム領域に進出。生産や物流、倉庫の管理といったシステム開発で業務領域のノウハウを蓄積してきた。
業務システムの領域は、ビジネスとしては順調に拡大したが、大規模なシステムになればなるほど大手ベンダーの二次請け、三次請けの割合が増える。当初は、業務システム開発案件の下請け仕事が約9割を占めていたが、将来の成長と社内エンジニアのモチベーションを高めていくためには、「一段の事業の多角化が必要」(杉本社長)だと判断するに至る。
多角化の切り口となったのが、中小企業に向けた課題解決型のSIと、自社パッケージソフトの開発だ。
2000年代初めの頃、ある中小流通業ユーザーの情報システムがうまく機能していない場面に出くわした。このユーザーは、業務効率化のため大手ITベンダーのシステムを採用したものの、既存システムとのつなぎ込みがちゃんとできていなかった。このため、一旦、紙に出力してから、もう一度、コンピュータに入力するといった無駄が散見された。
ITの専門家からみれば、「あのシステムとこのシステムをデータ連携させて……」と、すぐに解決方法がみえてくるが、ITに詳しくないユーザーではどうしようもない。
スキルインフォメーションズは、ユーザーからの要請を受けるかたちで、大手ITベンダーが構築したシステムは残しつつ、既存の周辺システムとデータ連携。紙に出力して、同じデータを二度入力する手間も解消され、ユーザーが当初から望んでいた「業務全体を効率化する目標」を達成することができた。
地場の中小企業を一層元気に
中小企業と大手ITベンダーでは、予算に隔たりがあることが多い。とくに既存システムと新システムを統合して、全体最適を成し得るには、顧客の業務全体を分析し、データ連携のところは個別カスタマイズが発生する。大手ITベンダーに任せるとコスト的に大きなものになってしまい、中小企業ユーザーは多少不便でも我慢して使うしかないケースが垣間見られた。こうした、「中小企業の理想と実態のギャップを埋めるSI領域にこそ、自分たちのビジネスチャンスがある」(杉本社長)と直感した。
とはいえ、スキルインフォメーションズ自身、大手ITベンダーの下請け仕事の割合が多く、顧客の業務分析に必要なスキルはあまりもっていなかった。ほぼ新規事業に近いかたちで人材育成に努め、顧客の業務を聞き込んでいくスタイルを推進。徐々に地元関西の中小企業向けSIの仕事の割合が増えていき、直近ではSI事業全体の約7割が中小企業を中心とするエンドユーザーからの直接受注、約3割が大手ITベンダーからの受注と構成比が逆転するまで拡大した。地場の中小企業が元気になれば、「ビジネスチャンスもそれだけ増える」(杉本社長)と考える。
近年では、バックエンド業務だけでなく、売り上げや利益に直結するような戦略的なIT投資が中小企業でも増えている。例えば、京都の着物リサイクルの会社が、ネットを使って国内外の顧客を開拓したり、それに伴うネット通販に対応した物流システムを刷新するなどの案件が増えている。大阪地区では古着リサイクルが盛んだ。 スキルインフォメーションズでは、ほかにも医療・介護向けの業務パッケージソフトや、文字フォントデザインのパッケージソフトを開発。売上構成比は、組み込みソフト開発とSI事業が約半分。パッケージソフト事業が約半分と、バランスのよい事業ポートフォリオを構築。景気の波に左右されにくい堅牢な収益構造を構築している。