新年度が始まった。今年は令和へと変わることから、システム改修に忙殺された企業が多いに違いない。令和元年の始まりは、平成の30年間を振り返るに当たって絶好のタイミングである。思い起こせば、業界を取り巻く環境が大きく変わったと感じる人が多いだろう。
著作権を巡る状況も、30年間で激変した。誰もが著作権という言葉を知るようになり、意識は格段に上がった。平成元年当時は、企業内の違法コピーが世界ワースト3に入るという酷い状況。それが、平成15年の頃にはトップ3に入るほどに改善した。
ただ、著作権に対する意識が大幅に上がったことと、ネットで誰もが発言できるようになったことで、企業や組織が著作権侵害を犯すと、すぐに炎上するようになった。東京五輪・パラリンピックのエンブレムや展開例の画像が、著作権侵害ではないかと問題になったことは記憶に新しい。このことを十分に理解しておかないと、例えば、社員の不用意な侵害行為により、企業がダメージを負うことは十分に起こり得る。
著作物は、特許などと同様、企業にとって自社の財産となる。受託開発の場合、著作権は発注者ではなく、開発者側が持つ。一般には、著作権の帰属を契約によって発注者側に移すが、このことを知らないと、どちらの立場でも権利を適切に守れない。逆に正しく理解してライセンスビジネスを展開すれば、著作権がビジネスの武器になる。
著作権という言葉は知っていても、内容に関してはあやふやな人も多いことだろう。例えば、昨年末に、著作権の保護期間が50年から70年に延長されたことをご存じだろうか。正確に言えば、以前は、著作者が個人の場合は生存中と死後50年、団体名義だと公表後50年だった保護期間が、それぞれ70年になった。デジタルネットワーク社会の進展に伴い、著作権法は毎年のように改正されている。
新入社員が入ったタイミングでもある。新しい令和の始まりを契機として、改めて著作権の基本的な知識を身につけることをお勧めしたい。著作権は、企業と社員にとって、令和におけるビジネススキルそのものだと肝に銘じてほしい。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)では、企業や団体での著作権教育を支援しているので、気軽に問い合わせいただきたい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。