このところ国や地方自治体、さらに民間企業の方針にまで「SDGs」(エス・ディー・ジーズ、Sustainable Development Goals)がピックアップされる頻度が高くなっている。SDGsとは「持続可能な開発目標」のことで、2015年9月に国連で採択された。
持続可能な世界を実現するために30年までに達成する17のゴールと169のターゲット、そして232の指標から構成されている。例えば、一番目の「貧困をなくそう」というゴールでは「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」ということで、「30年までに現在一日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」というターゲットが設定されている。
SDGsの取り組みの特徴は、こうした具体的な数値目標と関連する他の取り組みと合わせた複合的アプローチである。貧困を解消するためには、経済成長だけでなく平和も健康もジェンダーの平等もエネルギー問題も自然環境も、全てが密接に関係する。どこにどれだけインパクトがあるのかを考えながら、ゴールの実現に向けての取り組みが世界中で動き出した。
これまでのお題目的なゴール設定と異なるのは、金融が具体的にアクションを取っている点だ。米国の石油パイプラインのダコタ・アクセス・パイプラインは、環境や先住民コミュニティーへの悪影響が懸念され、大手金融が融資を引き揚げた。私たちの生活の中で欠かせないものとなっているパーム油も、熱帯雨林の大規模伐採によるものとして開発投資から金融機関が手を引き始めている。
理解はできるが今日の稼ぎのためには仕方がない、という自分第一主義的な発想と行動では、地球が成り立たなくなってきたという猛烈な反省からSDGsはスタートしている。
ICTの分野でSDGsに貢献できることは多い。最も期待されるのは、現状の見える化だ。私たちは状況を認識することで課題設定が可能になる。課題が見えることで施策が可能になる。今は、多くのことにフィルターがかかっていたり、タイムリーでなかったりする。
まずは、SDGsの概要を知り、状況を数値で把握し、自分たちの活動とのリンクを考えてほしい。地球上の全員がチームメンバーである。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
略歴

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。