中小企業庁は、中小企業向けの補助金や専門家による経営支援の情報発信、申請受付の機能を集約した「ミラサポ」の機能を2020年4月以降、順次強化していく。「デジタルファースト」をコンセプトに電子申請の機能を拡充させ、添付書類などの紙ベースの申請を極力デジタルに置き換える。加えて認証やAPI連携の基盤整備を行うことで国税電子申告・納税システム「e-Tax(イータックス)」や中小企業向けの業務アプリケーションなどからのデータの引き継ぎなどを視野に入れて、同じデータを何度も入力する手間をなくす「ワンスオンリー」の徹底を図る。(取材・文/安藤章司)
中小企業庁の西谷香織・長官官房デジタル・トランスフォーメーション企画調整官は、「現行のミラサポを拡充することで中小企業の経営者が補助金や専門家の情報をワンストップで、より効率よく手に入れられるようにする」と話す。機能強化版のミラサポのサイト名は「ミラサポplus」とする予定で、補助金などによる政策の実行と、中小企業診断士やITコーディネーター、社会保険労務士といった専門家による経営支援がより円滑に進むようにする。
現行のミラサポは13年10月に立ち上げて、この下期で7年目に入った。メールマガジンの読者は中小企業経営者や支援機関の専門家を中心に12万人余り。ただ、「補助金を含む各種の政策を的確に入手しているのは中小企業経営者のおよそ半分で、実際に活用しているのは1割程度にとどまる」(中小企業庁の勝本光久・長官官房広報相談室長)と、ミラサポを通じた周知活動がまだ十分ではないという課題を抱える。
そこで、ミラサポplusでは、補助金や専門家による経営支援に加えて、売上高や費用、利益がどのように増えたかのデータを蓄積し、分析できる「中小企業支援プラットフォーム」を新規で開発する。費用は地域の雇用創出や設備投資による設備関連の産業振興につながることから、「売上高や利益と同じくらい重要な指標」(勝本室長)だと中小企業庁では位置付けている。
中小企業庁の西谷香織・企画調整官(左)、勝本光久・室長
20年度からミラサポplusの運用を始められれば、21年度には1年分のデータが蓄積できる。これを中小企業庁側の担当者が分析し、政策立案に生かすとともに、中小企業の経営者も参照できるようにして、経営の可視化に役立ててもらう。
企業経営の可視化を巡っては、経済産業省が企業の経営状態を把握する健康診断ツールとして「ローカルベンチマーク」の指標を策定しており、このロジックをミラサポplusにも応用することで中小企業経営の健全度が分かるようにする。将来的には「あなたはこの補助金や専門家をこのように活用すれば、このくらい経営指標が改善する可能性が高い」などとレコメンドできる機能も実装することで、より多くの中小企業経営者にとって直感的に役立つサービスに仕上げていく計画だ。