視点

サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

2020/01/24 09:00

週刊BCN 2020年01月20日vol.1809掲載

 令和2年(2020年)2月2日。この「2」続きの日に、奄美大島で初めての100kmのウルトラマラソン大会が開催される。走らなくて良いということで私が大会委員長を務めることになった。

 実行委員会として協力のお願いにまわるため、まずは名刺を作ろうということになり、記載する項目を話し合うこととなった。出てきた案は委員会のなかの役職、名前、ふりがな、住所、事務局の電話番号、FAX番号、メールアドレス、LINE ID。普通の名刺は、だいたいこんな項目となるだろう。

 次にメンバーで項目の選定を行うこととなった。FAXは事務局に置いていないし、そもそもFAXで送ってくるものは無いだろうということで削除。それなら郵送物を送ってこられると困るということで、これも削除。大会直前や当日のトラブルで連絡するときに、事務所の電話じゃ誰も取れないということで、各自スマホの電話番号に変更。メールもこの際、要らない。電話番号でのSMSで通じるし、LINE IDもSMSがあればそれでいい。

 ということで役職と名前、そしてスマホの電話番号だけを記載することになった。

 デザイナーがデザインした美しい名刺が出来上がり、いざ使ってみると、渡されたみなさんは名刺管理アプリに写真を撮って保管している。

 アレ?そもそも紙の名刺って必要だったっけ?ということになった。自分のウェブサイトとスマホの双方に名刺っぽい画像を保存しておいて、相手に見せればいいのだ。さらにはデータ化の手間を省いてQRコードだけ読み取ってもらい、デジタル情報を正確に受け渡すのでもいい。こちらは名刺管理アプリ側の対応が必要だ。

 早晩、ビジネスカードという名で小さな紙切れを交換するアジア的な風景は地球上から姿を消すかもしれない。新入社員研修で名刺の渡し方の練習をしたのが懐かしい。左手で受けて右手で渡す。相手より下に渡す。なんてことは懐かしい記憶となるのだろう。

 「あ~、あの赤のロゴの会社でしたね」というイメージ情報での記憶も難しくなりそうだ。名刺の本質は連絡先情報の伝達。きちんと伝わるにはどうしたら良いかを考えると、メディアのあり方も時代とともに変化してくる。 
 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

略歴

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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