視点

ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義

2020/03/06 09:00

週刊BCN 2020年03月02日vol.1815掲載

 「SIerに頼んでいたら1億円はかかっていたでしょう。しかし、3カ月で内製したので、社員の人件費だけの400万円程度でした。そのうえ社内開発なので、常にユーザーやビジネスの現場からのフィードバックを受け、どんどんとアップデートを繰り返しています。明日とか来週とか、ということではなく、問題発覚からわすが10分後には解決していることもありました。結果として、顧客の満足度は高まり、利用者も増え、莫大な収益を上げることができています」

 これは、ある金融サービスを立ち上げた金融関係のCTOからうかがった話だ。彼らは開発を高速で回し、それを事業の成果に直ちに結びつけている。もちろん「サービス」なので、事業の進捗を常に見ながら現場のフィードバックに即座に対応している。

 かつてモノを中心にビジネスが成り立っていた時代には、つくって納品するシステム開発が当たり前だったが、サービスは現場との対話によって、常に進化し続けなければ使われなくなってしまう。

 だからできるだけ早く開発してサービスをローンチし、ユーザーのフィードバックを受けて高速にアップデートし、変化する現場に合わせて常に最適を維持しなくてはならない。アジャイル開発やDevOpsが普及するのは、このような背景があるからだ。

 彼らに工数を稼ごうという考えはない。むしろ少しでも工数を減らし、できるだけ早く事業の成果につなげたいと考えノウハウを磨いている。クラウドサービスやOSSは、そんな彼らを後押しするかのように機能や使いやすさを高めている。彼らが、これからのSI事業者の競合相手になっていく。

 こうした常識に目をつぶっていると、SI事業者は徐々に仕事を失っていく。だから自分たちの事業資産を「労働力」から「技術力」へ、収益を「工数提供の対価」から「価値創出の対価」へとシフトさせなくてはいけない。まだ工数で稼げるうちにとりかからなければ、何もできなくなってしまう。

 なによりも、それができる人材、つまり常に好奇心を持ち新しいことを試し、世の中が必要とするスキルを磨いている人材が、いなくなってしまう前に取りかかる必要があるだろう。
 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義

略歴

斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
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