就職(求人)活動というのは、普通は学生の側が企業にエントリーする。しかし、この新卒逆求人サイトの「ガクセン」は、企業の側が学生にアプローチする。サイトを運営するニューインデックスの津田武社長は「景気のよし悪しにかかわらず、企業は常に良い人材がほしい。しかし良い人材を選ぶのは大変なこと。これをお手伝いするのが仕事」と語る。

 同社のサイトには現在約500人の学生がリストアップされている。休学してインドネシアのホテルにインターンし、赤字経営を黒字に転換させて帰ってきたA君。ウルドゥー語が話せることを武器にパキスタンに遊学し、現地人を日本企業に就職させて年収1000万円を稼いだB君。自身の経歴とユーチューブの自己紹介で、こんな若者がいるのかと驚くような異能、異才の人材が次々と並んでいる。

 学生が希望すれば、誰でもサイトに登録されるわけではない。同社のスタッフが面接し一定水準に達していないと登録されない。津田社長が事業を始めるのに際して捨てたものは学歴の常識。学歴下剋上の思考法である。学生のなかには東京大学をはじめ全国の大学が並ぶ。当たり前のことだが、大学枠で選んだものではない。一芸に秀でた学生を集め積み重ねる作業は結構大変である。

 同社の主たる収入源は会員企業からの1社200万円の年間利用料で、学生には一切の費用は発生しない。それでも会員を集める営業よりも学生を集めるほうが難しいという。逆にいえば、それだけ企業は一芸に秀でた学生がほしいし、そんな学生が少なくなっているということだ。この方法で毎年数十人が就職している。

 どういうことなのか。昔は100人も採用すると1人や2人は、少々調子が外れている学生が混じる。銀行業界でいえば、次の時代の銀行の役割や金融革命を考える異能、異才が混じっていたものだが、これがめっきり少なくなった。右を見ても左を見ても優秀な人材ばかり集まる。この中に半沢直樹的な人材が入り込んでくるから組織は締ってくる。

 現在の一回の挫折も許されない減点社会は、逆にいえば壮大な人材のロスを生んでいるともいえる。当たり前の話だが、これだけ偏差値社会が定着すると、そんな逸材がいつの間にか濾過されてしまう。このような人材を専門に供給してくれるから、ガクセンはほかのサイトと異なり貴重なのである。まさに若手異能人材採用のデパ-トである。
 
アジアビジネス探索者 増田辰弘
増田辰弘(ますだ たつひろ)
 1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。2001年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。