そろそろ師走に入ろうかという11月30日、ビッグニュースが飛び込んできた。来年4月1日付でNECの社長が交代する。同日の緊急記者会見は、社会状況を踏まえてオンラインで行われた。その後、同社の広報スタッフと話をする機会があったが、「社長交代という重大な発表をオンラインでやる時代が来るなんて思いもしなかった」と吐露してくれた。まさに今年がどんな年だったのかを象徴しているように思える。

 記者会見の2日後、4月に社長を退き代表権のある副会長に就任する新野隆社長に話を聞く時間をもらった。もともと予定されていたインタビューだったので、質問内容はガラっと変わってしまったが、晴々とした表情が印象的で、まずは「やはりどこかホッとしたという感覚はありますか」と聞かざるを得なかった。会見では、今年度が最終年度の中期経営計画で掲げた営業利益率5%を達成すべく、「残り4カ月の任期を気を抜かずに全うする」と少し厳しい表情で語っていたこともあり、かなりのギャップを感じたからだ。

 新野社長は、筆者の問いかけに対して否定はしなかった。率直に、「想定以上の責任の重さだった」と振り返ってくれた(まだ在任中ではあるが)。新野体制の道のりは決して平坦ではなかった。2016年4月に社長に就任し、経営方針を具体化するための中計を策定したものの、実現の見通しが立たず、わずか1年で撤回。新たにつくり直したものが現在の中計であり、その目標達成のめどがついたことが社長交代を決断した最大の要因だった。泥をかぶりながらも、不退転の決意でNECの文化を変えることに最大の力を注いだ。典型的な国産企業の大企業病と決別し、優れた技術を価値に変え、新たな市場を切り開いていける自律的な組織にすべく、外部人材の積極的な登用や人事制度の改革も行った。正直でざっくばらん。社員にシンパシーを感じさせ、危機感をうまく共有できるトップだったという評価も聞こえてくる。

 後を継ぐ森田隆之・副社長兼CFOは、海外M&Aなどによる同社のポートフォリオ変革をけん引し、18年には経理・財務部門を経験せずにCFOに就任した。新野社長いわく「今までつきあってきた中で一番頭がいい人」。社内でも強烈なリーダーシップの持ち主として知られているという。雌伏の時を経て飛躍のフェーズに向かおうとする現在のNECに必要なリーダーとして新野社長が指名したのが、自身とはまったく違うタイプの人材だったことは興味深い。

 
週刊BCN 編集長 本多 和幸
本多 和幸(ほんだ かずゆき)
 1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、13年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。18年1月より現職。