日本情報技術取引所(JIET)は国内に11の支部(国外は3支部)を置く。会員増によりビジネスマッチングの裾野を広げていくのは各支部共通の目標だが、地域のIT市場や会員のビジネスの実情に合わせた独自性豊かな活動も展開している。2020年にサンエイ・ソフトウエア・ジャパンの影山晴男代表取締役が支部長に就任した埼玉支部は、地域の学校と連携し、IT技術者教育の裾野を広げるといった社会貢献に近い活動も拡大していく意向だ。
ビジネスセミナーの質を
埼玉支部独自の強みに
埼玉支部 影山晴男 支部長
埼玉支部は1月12日現在、26社が会員として活動している。影山支部長によれば、新規の入会と退会が断続的に続いている状況であり、「残念ながら右肩上がりに増えているわけではない」という。まずは30社を目標に、新規会員獲得と既存会員の定着に向けた施策を打っていく。
現在、埼玉支部が最も注力しているのが、毎月の営業商談会とセットで開催しているビジネスセミナーの充実だ。20年は11月が最終の商談会だったが、「ビジネスマッチングの件数が多かったことに加え、ビジネスセミナーに対する評価が高く、既存会員、新規会員候補の参加者双方に、JIET埼玉支部に加入するメリットを実感してもらえた手ごたえがある」と影山支部長は話す。
11月の営業商談会では、動画コンテンツの企画から制作、各種メディアでの配信までをワンストップで手掛ける企業から講師を招き、動画を使った社員募集のメソッド、ノウハウを学んだ。人材採用は埼玉支部に限らず、多くのJIET会員企業が課題を感じているテーマだ。「社長や社員へのインタビュー動画をうまく活用することで、学生や中途採用志望者に対して社内の雰囲気や事業内容、会社としての魅力などが伝えやすくなるという気づきがあり、具体的な手法を聞くことができたのは大きな財産になったという声が多かった」
会員の社内施策に役立つ情報だけでなく、ビジネス環境の変化をいかにビジネスチャンスに結び付けるかという視点でビジネスセミナーのプログラムを構築したケースもある。大手通信キャリアに、5Gサービスの現状と普及拡大のロードマップ、ビジネスエコシステム戦略などについて網羅的に解説してもらった回も好評だった。影山支部長は「5Gの商用サービスもスタートし、目の前にその波が来ていることはみんなが認識しているが、それを自分たちのビジネスとどう結びつけるかという点では具体的なイメージを持てないでいることが多い。その意味では非常に有益な情報を得られた」と振り返る。
こうした取り組み事例も広く周知し、会員のビジネスにダイレクトにポジティブな影響を与えられるセミナーコンテンツの企画力と調整力を全面に押し出すことで、新規会員の獲得を加速させたい考えだ。
また、影山支部長が埼玉支部のもう一つの特徴として挙げるのが、「コミュニケーション重視である」という点だ。ただし、従来は商談会やビジネスセミナー終了後に懇親会を開くなどしていたが、そうした活動も難しい状況になっている。「オンラインも有効に活用しながら、埼玉支部ならではのユニークな方法を模索していきたい」としている。
IT人材育成の支援も幅広く
埼玉県内のシステム開発会社にとって、受託開発やSESの取引先は東京都内の企業であることが多い。「埼玉県内の企業同士でのビジネスマッチングはまだまだ少なく、地元の市場をもっと拡大していく必要がある」(影山支部長)点は大きな課題だ。首都圏の複数都県で合同商談会は定期的に行っており、近隣の支部と連携してまずは会員のビジネスを活性化し、基礎体力の向上につなげる。将来的にプライムで案件が取れる会員を増やし、埼玉支部内でのビジネスマッチングも拡大していく構想だ。
今後の活動としては、社会貢献に近い取り組みにも力を入れる。20年に小学校でプログラミング教育が必修化され、21年度には中学校、22年度には高校でも同様にプログラミング教育が始まる。「JIET埼玉支部の力を合わせて、県内のプログラミング教育支援を行っていきたい。JIETのプレゼンス向上にもつながるはず」と影山支部長は話す。
また、サンエイ・ソフトウエア・ジャパンは現在、東洋大学と跡見学園女子大学からのインターンシップを受け入れている。自社だけでなく、埼玉支部全体でこうした取り組みの受け皿をつくっていくことも視野に入れる。
JIETは昨年、厚生労働省の「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」を受託。今年度(21年3月期)から3年間、就職氷河期世代を対象としてIT人材の育成と就職支援を行う。埼玉支部も本部のこうした活動と歩調を合わせ、幅広い世代のIT人材育成に貢献することで、中長期的に会員が優れた人材を採用しやすくなる環境を整えていく。