視点

eスポーツの土台は著作権

2021/03/12 09:00

週刊BCN 2021年03月08日vol.1865掲載

 近年、「eスポーツ」がメディアに取り上げられることが多くなってきた。

 eスポーツという用語の意味する幅は広いが、日本におけるeスポーツ振興を担う日本eスポーツ連合(JeSU)の定義によると、「広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称」とされる。

 2019年の茨城国体に合わせて全国都道府県対抗eスポーツ選手権が初開催され、現在ではプロ野球やJリーグの選手が参加したeスポーツイベントも行われている。またコロナ禍の折、延期を余儀なくされたスポーツイベントの代替企画としてeスポーツが活用されている。

 さらに教育現場では、eスポーツとプログラミング学習を同時に学べるイベントの開催やeスポーツが楽しめるホテルがNHKのニュースで取り上げられている。私もeスポーツという観点からラグビー協会を訪問し、昨年行われたジャパン代表の流さんと姫野さんのラグビーゲーム対戦ネット放映について取材した。

 さて、このeスポーツについて、スポーツイベントとして拡大を図るためには、他のスポーツと同様、ドーピングや八百長などの不正防止のための基盤づくりが必要となる。JeSUではそのための検討が進められており、私もコンプライアンス委員会のメンバーとして協力する。

 eスポーツとリアルスポーツとの違いで最も大きなものは、ゲームがその中核を占めていることであろう。ゲームが素晴らしいものであればこそ選手が多彩なスーパープレーを繰り出し、観客もリアルに楽しむことができる。

 実は日本のeスポーツの多くが、プログラムの著作権者でありコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)会員でもあるゲームソフトメーカーが開発したゲームを使用し、また、イベント開催にも協力している。つまり、eスポーツを行うために最も重要な基盤は著作権であり、イベント主催者は常に著作権を意識した運営が求められるのだ。

 ACCSでは、eスポーツの著作権問題において会員会社のサポートを行っていくことになっている。eスポーツをオリンピックの正式種目にしようとする動きもある。今後も本稿でeスポーツの最新動向を報告していきたい。 
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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