この1年のマクロ環境の激動は、当然ながらIT市場にも大きな影響を及ぼしている。そのうねりの中で、企業や組織、ビジネスの再編も続いている。4月14日、米デル・テクノロジーズが子会社の米ヴイエムウェアを傘下から独立させる(スピンオフする)と発表した。

 2015年に当時の米デルが米EMCグループを670億ドルで買収したことで、2004年にEMCに買収されたヴイエムウェアもデルの傘下に入ることになった。デル・テクノロジーズはサーバー仮想化の世界でデファクトスタンダードとしての地位を確立していたヴイエムウェアの独立性は維持しつつも、他のハードメーカーと比べて「より密結合的な連携によりシナジーを創出する」という方針を打ち出し、それはHCIなどの新製品という形で結実したように見えた。

 実際、デル・テクノロジーズ傘下となったことがヴイエムウェアの独立した仮想化ソフトベンダーとしての成長を阻害したという印象はない。その意味で、これまでの両社の距離感は適切なものだったという見方はできるだろう。しかし視点を変えれば、ヴイエムウェアの中立性や独立性が揺らぐほどの強いシナジーを生み出すことができなかった5年間だったのかもしれない。

 ITインフラ市場を中心に巨大勢力を形成し、ビジネスの規模を順調に拡大しているように見えたデル・テクノロジーズだが、EMCの買収によって大きな負債を抱えたのも周知の事実だ。買収完了以降も、資本政策をめぐってはさまざまな情報が錯そうした。実際の動きを見ると、13年に株式を非公開化したデル・テクノロジーズは18年の年末、再上場して資金調達力を高めた。今回のスピンオフで、ヴイエムウェアの株式の80.6%を保有するデル・テクノロジーズは最終的に93億~97億ドルの現金を得て、負債の返済に充てるという。

 いずれにしても、デル・テクノロジーズの経営にとって優先順位の高い課題は何なのかが浮き彫りになったとは言えよう。スピンオフ後も両社は独自の協業契約を結び、デルテクノロジーズのマイケル・デル会長兼CEOはヴイエムウェアの会長を引き続き兼務する。アーキテクチャーが集中と分散に交互に振れる情報システムのトレンドのように、企業組織も離合集散を繰り返す。今回の判断が両社のこれからの成長にどのような影響を与えるのか、目が離せない。

 
週刊BCN 編集長 本多 和幸
本多 和幸(ほんだ かずゆき)
 1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、13年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。18年1月より現職。