視点

選別されるニュースの功罪

2022/08/10 09:00

週刊BCN 2022年08月08日vol.1934掲載

 先日あるカンファレンスで「Web3(ウェブスリー)」や「DAO(自律分散型組織)」について話をしたが、予想以上に響いていないことに唖然としてしまった。私の説明が稚拙だったのかもしれないが、聞き手の関心のなさや、ほかの登壇者の情報の古さ、さらにはWeb3に関する間違った認識をもとにした批判が議論されている状況に驚きを隠せなかった。

 著名な登壇者はWeb3にまつわるゴシップネタを中心に展開し、過去の栄光を披露している始末。こんなにも情報に個人差があるのは、見ている情報が個人の好みにフィルタリングされコントロールされていることが一因と言える。

 Webページを見ている際に、広告のバナーをクリックして閲覧した後、他のページに行っても同一商品の広告が表示され続け、追いかけられているように感じたことがあるだろう。つまり広告をクリックしたことで、あなたが興味あるのだということが記録される。ちなみに私のFacebookもGoogle NewsもメタバースとWeb3がらみのニュースばかりが並んでいる。それだけを見ると、世の中はWeb3ブームであるように思えるが、実際はそんなことはない。例えば友人の伝統工芸の作家が見ているニュースサイトには、全く違う伝統工芸にまつわるニュースが並んでいるのだ。

 私たちはインプットされる情報をサイト側にコントロールされている。これはある意味、とても便利で心地よい。ただその情報フィルターによって真実が見えなくなってしまうこともあるだろう。

 冒頭の件でも、著名人が流暢な論旨展開でWeb3を否定していることによって、多くの人が同調してしまう。もちろんWeb3を否定することがダメと言っているのではなく、きちんとした正しい情報を踏まえた上で聞き手が自分で判断ができるようになる必要がある。

 情報は溢れかえり、すべてを把握することは不可能だ。そうなると取得する情報を選別しないといけないのだが、その選別を情報提供側に任せてしまうと誤った判断を起こしやすい。難しいが、ニュースのヘッドラインを鵜呑みにせず自分で判断できるように、情報の取り方には工夫が必要である。昨今のWeb3関連の話題は仮想通貨の暴落、芸能人の投資事件などで悪い話題が多い。Web3が目指そうとしている本当の意味が伝わらず、隠れてしまわないかとても心配になっている。

 
事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
 1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。
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