XDRとは
　Extended Detection and Responseの略。エンドポイント、ネットワーク、メール、クラウドなどに設置したセキュリティ製品の情報を統合・分析、脅威をいち早く検知して対応までを行うセキュリティ対策の概念。

　米Fortinet（フォーティネット）は、自社セキュリティ製品を統合的に管理・可視化し、そこにAIを組み合わせて運用を自動化する「セキュリティ ファブリック」のコンセプトを提唱していた。XDRと同じアプローチのセキュリティ対策をいち早く提供してきた格好だが、2021年にはセキュリティ ファブリックの検知力を向上できるというXDRライセンス「FortiXDR」を発売した。日本法人フォーティネットジャパンのマーケティング本部の伊藤憲治・プロダクトマーケティングマネージャーは「当社では、XDRを製品としてではなく、戦略として捉えている」と述べ、統合分析によるセキュリティ対策の重要性を訴求していく考えだ。

容易にXDRを実装

　フォーティネットは、主力製品の次世代ファイアウォール「FortiGate」をはじめとしたネットワークセキュリティのほかにも、エンドポイントセキュリティやクラウド環境向けセキュリティなど幅広い製品ポートフォリオを展開している。
 
　同社の各製品には、独自OSの「FortiOS」が搭載されている。セキュリティ ファブリックによる連携では、FortiOS搭載製品から得られる脅威情報やログデータを集約し、デバイスへのアクセスをコントロールする「ゼロトラストアクセス」、セキュリティとネットワークの制御を一体化する「セキュリティドリブンネットワーキング」、クラウドネイティブセキュリティを提供する「アダプティブクラウドセキュリティ」といった技術群や、脅威インテリジェンスと組み合わせる。これらを統合的に可視化・分析することで、迅速に脅威から保護できる環境を構築する。伊藤マネージャーは「セキュリティ ファブリックはXDRそのものであり、XDRという言葉が出てくる前から当社では打ち出してきた戦略だ」と強調する。
 
　XDRでは、エンドポイントとネットワークのセキュリティ製品を統合し、そこからカバー領域を拡張していくケースが多い。同社のセキュリティ ファブリックの場合、FortiGateとEDR（Endpoint Detection and Response）製品「FortiEDR」を連携させる際、GUIから容易に設定できるなど、複雑な構築を必要とせずにXDRによるセキュリティ強化を実装できるのが特徴という。

マルチベンダー対応が重要

　セキュリティ ファブリックは、フォーティネット製品だけではなく、サードパーティー製品にも対応しており、伊藤マネージャーは「XDRの概念からすると、マルチベンダー対応であることは非常に重要だ。この部分も以前からセキュリティ ファブリックでは実現している」とアピールする。

　XDRは、1社で完結させるシングルベンダー型と、複数のベンダーの製品を連携させるハイブリッド型に分けられる。フォーティネットの場合、豊富な製品を展開しているため、シングルベンダー型XDRの提供が可能だが、シングルベンダー型を強く訴求していないという。伊藤マネージャーは「お客様の環境を考えると、セキュリティ製品をシングルベンダーで統一するのは現実的ではないし、リスクもある。ただ、XDRにより、例えば10あるベンダーの製品を2～3まで集約していくケースは出てくるのではないか」と分析する。

「FortiXDR」で検知力向上

　セキュリティ ファブリックの考え方を広げていく中で、フォーティネットは21年にXDRライセンスの「FortiXDR」を発売した。FortiXDRについて伊藤マネージャーは「セキュリティ ファブリックの検知率をさらに高める役割となる」と述べる。従来のセキュリティ ファブリックの場合、セキュリティ機器からの脅威情報はログ管理・分析製品の「FortiAnalyzer」に一度集約されるが、FortiXDRは、セキュリティ機器から直接、脅威情報を収集するため、より迅速な対応が可能となるという。伊藤マネージャーは「これまではセキュリティ ファブリックの情報を伝えることが大半だったが、今後、FortiXDRの情報も発信していく」と語る。

　サイバー攻撃が増加・巧妙化したことで、大手企業だけでなく中堅・中小企業のセキュリティ強化も叫ばれており、今後、統合分析によるセキュリティ対策は幅広い企業で必要とされる。中堅・中小企業の場合、セキュリティの専任者がいないことが多いため、フォーティネットが提供するMDR（Managed Detection and Response）サービスや、MSSP（マネージドセキュリティサービス事業者）が提供するフォーティネットの製品を利用した運用監視サービスの利用を見込む。

　伊藤マネージャーは「当社はお客様のセキュリティ対策を戦略化して考えており、XDRは戦略の一つとして提案していく」と展望する。