視点

SI営業は「提言営業」への転換を図るべし

2025/05/07 09:00

週刊BCN 2025年05月05日vol.2058掲載

 クラウドの普及や内製化の拡大など、SI事業者を取り巻くビジネス環境は激変している。営業は従来の「工数・モノ売り営業」や「ソリューション営業」から脱却し、新たな営業スタイルである「提言営業」へと転換が求められる。合わせて、それを支える技術知識の獲得、顧客事業への貢献という意識も必要だ。以下の3点がポイントになる。

▽ソリューション営業から提言営業へ

 ソリューション営業はもはや限界だ。それは、各社が同じような「ソリューション」を持ち出し、加えて不確実性が高まる環境で顧客自身が課題を明確に特定できない状況にあるからだ。「課題を聞かせてください、解決策を提案します」というソリューション営業では案件獲得は難しい。だから提言営業への転換が求められる。

 提言営業とは、顧客の「求める要求」に応えるのではなく、「要求」そのものを生み出す営業スタイルだ。顧客のビジネス環境や課題を顧客以上に深く考察し、「何を解決すべきか」という課題を顕在化させ、あるべき姿を示し、「御社の課題はここにあります」と顧客に提言することをきっかけに案件の獲得を目指す。これを糸口に議論を深め具体的な課題を浮かび上がらせれば、取り組むべきテーマも見える。そこからは従来のソリューション営業に持ち込み、案件獲得につなげる。

▽営業に求められる技術知識

 クラウドの充実やAIの機能向上により単純な工数需要は減少する。SI事業者は「工数」ではなく「技術力」を売ることへシフトする必要がある。そのためには、営業自身が技術知識を磨くことが欠かせない。例えば、クラウドネイティブ、コンテナ、マイクロサービス、AI、アジャイル開発やDevOpsなどのモダンITについての知識を持つことだ。こういう知識があればこそ、顧客は営業と話ができ、信頼を深め、提言に耳を傾けてくれる。

▽顧客の事業や経営への貢献

 従来は商材販売が目的化する傾向にあったが、商材はあくまで「手段」である。顧客の事業や経営への貢献こそが顧客の求める「目的」だ。営業は、ITを駆使して事業や経営をどのように変革すべきかを明言できなくてはならない。それこそが、これからの営業に求められる資質と言えるだろう。

 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
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