米Akamai Technologies(アカマイ・テクノロジーズ、アカマイ)は9月に新たなパートナープログラム「Akamai Partner Connect(APC)」を発表し、国内では2026年1月から本格的な運用開始を予定する。従来のプログラムと比べ、ディスカウントの仕組みの変更や支援体制を強化した。新規パ-トナーの拡充にも取り組み、パートナービジネスの強化を図ることで市場での存在感を高めていく。(岩田晃久)
パートナーのモチベーションを高める
アカマイは最大手のCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)ベンダーとして市場をけん引してきた。現在は、CDNの売り上げを上回るまでに成長したセキュリティーや、年々売り上げが拡大しているクラウドなどにも製品ポートフォリオを拡大している。今後はこれらの強みを生かし、AIを軸にした成長戦略を描いている。
さらなる成長に向けて重要な役割を果たすのがパートナーを通じたサービスの提供だl。新パートナープログラムであるAPCは、これまでのプログラムをさらに進化させ、パートナーがより“稼げる”環境を用意する。
従来のプログラムでは、認定資格を取得したパートナーに対して、大きなディスカウントを提供していたが、APCではパートナーが案件を創出し、それを登録することで充実したディスカウントを得られるようにした。加えて、セキュリティーのマイクロセグメンテーション製品「Guardicore」や「API Security」など、アカマイの注力商材での案件創出にはさらにディスカウントする。日本法人のチャネル営業本部の岩月厚・本部長は「パートナーが自分たちで案件をつくりだすモチベーションを高めていくのを目的としている」と述べる。
パートナーへの支援体制の強化も図った。これまで提供していきたエンジニア向けのトレーニングを充実させたり、検証環境を利用する際の手続きを簡素化し、すぐに利用できるようにした。
10月に国内パートナーに向けて、APCの説明会を実施。26年1月からの本格運用に向けた準備を進めている。
岩月 厚 本部長
強みを持つパートナーを開拓
国内のリセラーは大手SIerやセキュリティーベンダーなどが中心となっている。11月には、新たに大手CIer(クラウドインテグレーター)のアイレットとパートナー契約を締結した。アイレットはマルチクラウド戦略の一環としてアカマイのクラウド製品を中心に提案を行う。岩月本部長は「アイレットのように強みのある分野を持つパートナーを開拓していきたい。アカマイのMDF(マーケティング・デベロップメント・ファンド)を活用して、パートナーと共にリード獲得を進めていく」と展望する。
国内市場では、24年からディストリビューター経由での販路を構築した。岩月本部長は「当社のリソースなどの関係でこれまでアプローチできていなかったパートナーに対してディストリビューターを経由することで付き合いができるようになり、販売実績も伸びてきている」と手応えを語る。
現在の顧客層はラージエンタープライズが中心で、今後も「まだリーチできていないラージエンタープライズが多いため、(ラージエンタープライズの)開拓を進めていく。当社の製品を扱うパートナーもラージエンタープライズの顧客を多く持っているので、同じ方向性でビジネスを進めていける」と岩月本部長は述べる。続けて「ミッドマーケットにもフォーカスしていきたい。この部分はパートナーの力が必須になる」と展望する。
米NVIDIAとの協業でAIビジネス加速へ
AIビジネスの拡大に向けては、10月に米NVIDIA(エヌビディア)との協業による、「Akamai Inference Cloud」を発表した。世界4200を超える拠点で構築するアカマイのグローバル・エッジ・ネットワークからエヌビディアのGPUサーバーなどのAIインフラを利用できるようにするもので、ユーザーに近いエッジで処理することで低遅延でのAI推論を実現し、リアルタイム性を求めるニーズなどに対応する。岩月本部長は「エヌビディアとの協業は大きなインパクトになり、お客様への訴求力も変わってくると思う。そのほかにもAI関連では、『Akamai Firewall for AI』をリリースしており、今後、大きなポイントになる」と力を込める。
今後の方針について、岩月本部長は「パートナーと共に大きなビジネスをつくっていきたい。そのためにもパートナーエコシステムの強化を進めていく」とした。