Special Feature

進化するクラウドマネージドサービス DX推進のキープレイヤーを追え!

2021/05/20 09:00

週刊BCN 2021年05月17日vol.1874掲載


 クラウドに対するニーズが従来とは一段違うレベルで膨らみつつあるのも、新型コロナ禍が法人向けIT市場にもたらした大きな変化の一つだ。これと軌を一にするように、クラウド市場の成長、特にIaaS/PaaS利用の裾野拡大をけん引してきたクラウドマネージドサービスも進化を遂げている。ユニークな施策を打ち出すクラウドインテグレーターの動きを深掘りすることで、これからの市場で何が競争力の源泉になるのかを探る。
(取材・文/本多和幸)

後発だからこその差別化に挑むBeeX
クラウドマネージドサービスは間接販売でスケールさせることができるか

 AWSのSIパートナー御三家と言われてきたアイレット、サーバーワークス、クラスメソッドなどに代表される“クラウドインテグレーター(CIer)”が先鞭をつけた印象が強いクラウドマネージドサービスの市場。やがては大手SIerも軒並み参入し、2020年には新型コロナ禍の影響を受け、クラウドのメリットが改めて多くのユーザーに強烈に意識されるようになり、競争環境に新たな変化が生じている。そんな中でユニークな取り組みを始めたのが、テラスカイのグループ会社であるBeeXだ。後発のクラウドマネージドサービス市場で彼らがチャレンジするのは、チャネルパートナー経由の拡販による成長だ。

“メーカー的な立ち位置”でストックビジネスを模索

 BeeXはもともと、基幹系システムのモダナイズやクラウド移行の専業会社として2016年3月に発足した。SAPのビジネスアプリケーションのクラウドシフトでは既に実績も豊富だ。しかし社内では、既存のSIビジネスの範疇だけでは安定した成長を継続できないという課題も共有されていたという。そこで同社は昨年、クラウドインテグレーションのノウハウを生かしたクラウドマネージドサービス「BeeXPlus」を立ち上げた。「AWS」「Microsoft Azure」「Google Cloud」の大手3サービスに対応し、クラウドのライセンス再販、導入や活用・展開支援、監視・運用といったサービスをワンストップで提供する。

 マルチクラウド対応であることは一つの特色ではあるが、それだけでは他社のクラウドマネージドサービスと大きな違いがあるわけではない。同社の戦略で最も特徴的なのは、BeeXPlusをチャネルパートナー経由で拡販しようとしている点だ。BeeXPlus事業をリードするビジネス開発推進本部営業開発部の小崎史貴・ビジネスディベロップメントマネージャーは「メーカーのような立ち位置で、パートナーとの協業によってスケールするストックビジネスを目指した」と話す。
 
小崎史貴 マネージャー

 クラウドに限らず、一般にマネージドサービスはSIerなどが自社のリソースや技術・ノウハウを活用して提供する一種のアウトソーシングサービスであるわけだが、これを再販するというのはどういうことか。小崎マネージャーによれば、パートナーに対してクラウド技術者を育てる教育プログラムを提供し、BeeXPlusのメソッドとスキームを身につけてもらった上でサービスを再販してもらうイメージだという。各パブリッククラウドサービス自体の契約はBeeXを窓口とする形が基本(パートナーにはマージンを支払う)で、チャネルパートナーが独自にパブリッククラウドサービスのパートナー認定などを取得する必要はない。

ローカルキングとWin-Winの協業関係を結ぶ

 BeeXPlusのチャネルパートナー候補として同社が特に重視しているのが、“ローカルキング”とも呼ばれる各地域の有力SIerだ。首都圏などの大都市圏とそれ以外の地方では、クラウドの浸透度合いにまだまだ大きな差があるというのが多くのITベンダーの実感だろう。しかし見方を変えれば、地方市場の潜在的なクラウド需要は大きいということでもある。そして地場の有力SIerも、クラウドとどう付き合っていくべきか、いまだに悩みを抱えているケースが少なくない。BeeXはBeeXPlusを通じてそうしたSIerとWin-Winの関係を結ぶことができると考えているのだ。

 BeeXにとっては、クラウドビジネスにこれから本格的に取り組もうとするSIerをチャネルパートナーとして育成することで、クラウドマネージドサービスのビジネスをスケールするためのリソースをスピーディーに確保できる。一方、チャネルパートナーの視点では、BeeXPlusに参画することでクラウドの知見を吸収し、新たなマーケットに参入するハードルを下げることができるという。小崎マネージャーは「地場の有力SIerはクラウドを活用したDX支援など新しいビジネスに舵を切っていかなければならないという課題を抱えている。そこにBeeXPlusを活用してもらえるし、当社にとしては、チャネルパートナーの力でBeeXPlusを地域のDXに貢献するサービスとして市場に浸透させることができる」と力を込める。

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