北斗七星

北斗七星 2002年2月11日付 Vol.928

2002/02/11 15:38

週刊BCN 2002年02月11日vol.928掲載

▼「打ち上げ自体は成功だった」。ロケット関係者はよくこの言葉を口にする。2月4日に打ち上げられた国産のH2Aロケット2号機は無事、宇宙にまで到達した。が、搭載していた衛星の1つを分離するのに失敗。同衛星を使って予定されていた大気圏への再突入実験が不可能になった。ロケット事業は不確実性がつきもの。関係者からすれば、どこまでを成功と見るか微妙なところだろう。だが、素人目からすれば最終目的を達してこそ、成功と呼べる。

▼H2Aロケットはハイテク技術の塊だ。日本の名だたる企業群が技術を結集し、昨年8月に1号機の打ち上げに成功している。90年代のH2に続く改良機として開発されたものだが、そのH2といえば90年代半ばだったろうか、こんな出来事を記憶している。やはり打ち上げ自体は成功したものの、制御システムの不具合から衛星を軌道に投入できず、衛星は宇宙のゴミと化した。その際、ある大手メーカーに感想を求めたところ「軌道投入の失敗は残念」と前置きしながらも、「うちはエンジン部を造っている。今回、エンジンは正常に機能したと聞いている」とのコメント。少なくとも自社の役割は果たした、といったところだろうか。

▼ロケットは各パーツごとにメーカーが複雑に分かれ、1つ1つのパーツは各社が技術の粋を集め開発している。しかしそれだけに、膨大な数のハイテク部品を1つにまとめ機能させるには極めて高度なノウハウが求められる。昨今、IT産業でも、全体をシステムとして組み上げ、その能力を最大限に引き出せるノウハウをもつ人材が求められている。ユーザー企業は、ハードやソフトの性能や中間処理プロセスの“成功”ではなく、最終目的達成のためにITを導入するのだ。
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