Letters from the World

中国に頼らない生き残り策

2002/10/07 15:37

週刊BCN 2002年10月07日vol.960掲載

 台湾のIT産業を語るとき、多かれ少なかれ、中国なしには語れなくなってきた。最近では、半導体大手のTSMC(台積電)が中国へ工場進出することを決定したというニュースが伝えられた。これは、まさに巨大な市場を視野にいれての決定だ。台湾の部品関係の大手企業のFOXCONN(鴻海)は、すでに台湾に工場はいらない、とまで言い切っている。つまり、それだけ中国の工場の操業が軌道に乗っているということである。

 ところが、それらの流れに逆らった、元気のいいナショナリズムあふれる会社が台湾に存在することも事実である。工業用パソコンのケースやスイッチング電源を製造する、あるメーカーは、まだ創業一年にも満たないが、中国への進出を拒否し、台湾での大規模投資を実行した。これは、この時期に於いては、かなり大きな決断が必要だったことだろう。

 同社の勝算あるプランは次のようになる。ファクトリーオートメーションの徹底。自動倉庫。フレキシブルな独自設計の表面実装ライン。バーコードによる行程管理と品質管理、そして優秀な研究開発である。中国が不得意とする、少量多品種の高品質生産にスポットをあてた。実際、工業用パソコンは台湾が中国に比べ、得意とする数少ない分野であろう。大手ではAdvantech(研華)が有名である。

 その新会社のCTOは台湾のパソコン業界の草分けの有名人であり、CEOはエイサー出身でその後大手のケースメーカーを興したことで有名である。そのほか、熱力学の専門家など、多くの優秀な人材が創立者として名を連ねている。中国に負けじと、多分に心情的に投資を決断した投資家も多いと推測される。面白い試みだ。この不景気な台湾で久しぶりに元気な会社を見つけ、うれしくなった。(台北発)
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