ラジオで、街頭インタビュアーが女子高校生に「学校では、何の部活動に入っているの?」と聞いていた。女子高校生ははにかんだ口調で「パソコン研究部」と答えていた。

 へーえ、10年ぐらい前では、こんなクラブ活動はほとんどなかっただろうなぁ。ついでに入部動機もふるっていた。「ブラインドタッチがカッコいいなあと思ったから」。

 実は、わたしもキーボードタッチに憧れたクチである。きっかけは小学生の頃、毎回欠かさずに観ていたドラマ「刑事コロンボ」だ。

 ピーター・フォーク演じる刑事コロンボが同僚の男性のデスクを訪れるシーン。タイプライターを打ちながら男はコロンボに言う。「大学のジャーナリスト科では、タイプライターが必須なんですよ。わたしはピアノを習っていたから、指を走らせるのだけは得意でね。ほら、こんな風に…」

 男は軽快なリズムで男はキーを叩き続ける。当時ピアノ少女だったわたしはこの場面にショックを受けた。蝶が羽ばたくように軽やかに舞う10本の指の動きが、ずっと見ていたい衝動にかられるほど美しかったのである。

 おまけにジャーナリストという言葉も妙に耳にひっかかった。20年以上経った現在、物を書く仕事をしているのは、案外このシーンで受けた衝撃が将来を夢みる機能に働きかけたのかな、と思うことがある。

 キーを叩く、といえばこんな話がある。元同僚のT君が仕事中、お菓子を食べているときに限って、隣席の先輩Yさんがパソコンのキーボードを激しく叩きはじめるのだという。思いきってある日、T君はお菓子を差し出した。するとYさんは、待ってましたとばかりに片手山盛り一杯分のあられを一気に口のなかに放りこんだというのである。

 そのときのYさんのおちゃめな姿に親近感をもって以来、関係が良好になったんだよね、とT君は言う。うーむ。キーボードタッチは人々に多大な影響を与えているのですなぁ。