北斗七星

北斗七星 2004年12月13日付 Vol.1068

2004/12/13 15:38

週刊BCN 2004年12月13日vol.1068掲載

▼かつてのコンピュータと言えば専門家にしか扱えない代物だったが、これをコモディティ(日用品)に変えるきっかけをつくったのはパソコンの登場であろう。オープンアーキテクチャーを旗印に米IBMが「IBM PC」を世に送り出したのが1981年。そのIBMがパソコン事業から事実上撤退する。事業売却先は、中国パソコン最大手の聯想集団(レノボグループ)。レノボは84年、中国科学院計算技術研究所のスタッフ約10人が起業した会社で、昨年4月までは「レジェンド」のブランド名で広く知られた。

▼中国には政府が後押しする長城計算機という国策パソコンメーカーが存在するにもかかわらず、IT最大手に成長できた要因は徹底した低価格戦略にあると言われる。IBMをはじめパソコン大手の多くが価格下落による採算の悪化に苦しんでいるが、そうしたなか、低価格攻勢で台頭してきたレノボが老舗パソコンメーカーのIBMを飲み込んだわけだ。もっとも、業界内からは「IBMはたとえ赤字でもパソコン事業を手放すべきでない」との声も漏れ聞く。

▼一般人にとってあまり接点のなかったコンピュータを身近な存在に引き寄せ、ネットの発展に寄与したのがパソコンだとすれば、今後も最先端のIT動向はパソコンから生まれると言っても過言ではない。それを簡単に切り捨ててよいものか。メインフレーム時代に専門家ばかりを相手にしてきた結果、世の中の趨勢がダウンサイジングに流れ始めたにもかかわらず波に乗り遅れ、IBMの屋台骨が揺らいだのはわずか10年余り前のことだ。
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