ここ米国でも「ようやく」ではあるが、ブロードバンドがほぼ国内全域に行き渡りつつある。光ファイバー網も大都市を中心に急速にインフラ整備が進んでおり、導入に踏み切る個人ユーザーも多いという。

 2001年時点でのブロードバンド加入者は280万人であったのが、04年では810万人に達し、現在も成長を続けている。

 このブロードバンドの普及と低価格化により、独立した個人として業務ごとの契約を企業側と交わし、自宅で仕事を行う契約社員の比率が高まっているという。しかも最近では、その業種は一般のオフィスの事務処理や医療事務にまで及び、これまで自宅業務の代表だったデータ入力や校正業務などと共に幅広い分野に及んでいるのが特徴だ。

 さらにIP電話の実用化によって自宅でのコールセンター業務も可能となり、大手流通チェーンもこぞって大量に契約社員を採用している。

 しかしこの傾向には別な面もある。長引く不景気により正規雇用はできるだけ避けたいが、現時点での人材は必要という企業側は、契約社員を採用し、その労働力に頼らざるを得ない。そこで正規雇用を望む労働者に対して「ブロードバンドによる自宅勤務」という聞こえの良いパート契約を勧めることで、企業側が労働力確保をより容易にするための手段にしているという事実だ。

 優秀な人材であれば、個別の契約の方が収入も就業条件も良いというケースはあるだろう。しかし多くの労働者にとっては、正規雇用に付随する各種の福利厚生の方に魅力を感じることが多いだろう。

 事実、ブロードバンドによる自宅勤務といえども、支払われる賃金が他と比べて良いわけではなく、労働者側にとっては大きなメリットはない。

 一部の大都市以外では、通勤環境に難がある地域は米国には多くない。企業側の論理による雇用が続く限り、いかに言い方を変えても、不景気の逆風はまず最初に末端の労働者に当たるものなのだ。(ニューヨーク発)