そう遠くない昔、マンハッタン内の高級ホテルには、多忙なビジネス客のためにビジネス・アシスタントやタイピストが必ず常駐していた。しかし今はITの時代。もはや彼らには出番がないかのようにも見え、実際にサービスを取りやめたところも多い。しかしあるホテルの老執事は、ITが普及した今だからこそ自分が働けているのだと胸を張る。

 ITの普及により、ホテルはそのIT環境の維持のみに気を遣うようになったためだと、その執事は言う。今の彼は、ビジネスルームの責任者としてオーク材の机を磨き上げ、パソコンやプリンタに問題がないかどうかをチェックし、そして馴染み客からの寝酒の要望には、自分の頭の中にある顧客データベースからそのお客の好みをアウトプットしてバーテンダーに伝える。

 彼は「コンピュータやネットが普及したおかげで、私は今でもこの仕事を続けることができています」「昔はたった一文字タイプを打ち間違えただけで怒鳴られていたものですが、今はパソコンの修理もできない私をかえって尊敬してくれています」と笑う。本当の意味でのテクノロジーの進歩とは、こうあるべきだろう。(ニューヨーク発)