北斗七星

北斗七星 2006年3月20日付 Vol.1130

2006/03/20 15:38

週刊BCN 2006年03月20日vol.1130掲載

▼鉛筆を握らないと、企画も構想も頭に浮かんでこないというのは、旧い(失礼!)編集者なら覚えがあるだろう。時代の移り変わりは、日常の仕事のなかでも肌で感じることができる。その最たる変化はITの活用に現れている。

▼執筆者に郵送してもらった原稿は、原稿用紙に字詰めリライトし、それを割り付けて印刷所に渡すというのが新人のころの編集作業のやり方だった。締切日近くなると、執筆を依頼した先に矢のような催促をするという、一種サデスティックな喜びもあった。そういえば、連載の原稿が締切日に間に合わず、新幹線に乗って原稿を届けてくれた執筆者がいたことを思い出す。それがいまや、クリックひとつで一瞬にして原稿が届くようになった。

▼進歩は大河の流れのようなものだ。流域の私たちに大きな恵みをもたらしてくれる。だが、時には洪水などの被害を及ぼすこともある。これをITに置き換えてみると、膨大な量の情報を超高速で伝達するという利便性が享受できる一方で、情報の大量漏えいという〝負の副産物〟の発生も覚悟しなければならないということになる。

▼昨年4月、個人情報保護法が鳴り物入りでスタートしたが、法施行後も情報漏えいが後を絶たない。事故防止の決め手は「人の意識」にあることに異論はない。だが、情報漏れを防ぐ制度やシステムを構築するのは、やはりITに関わる企業の責務だと思う。先達がダムを築き、護岸工事を施して〝暴れ川〟を治めたように、人智を生かせば災厄は必ず防げると信じる。
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