北斗七星

北斗七星 2006年5月1日付 Vol.1136

2006/05/01 15:38

週刊BCN 2006年05月01日vol.1136掲載

▼景気回復の足どりがようやく確かなものとなってきた。このまま11月まで前年同月比プラスが続けば、いざなぎ景気の57か月を超えて戦後最長になるという。確かに、IT業界では、システム開発案件が目白押しで技術者不足が深刻だ。向こう3年間の設備投資も90年代以降で最大規模が見込まれ、強気の経営姿勢が目立つようになってきた。

▼とはいえ1965年から毎年10%前後の高度成長に沸いたいざなぎ景気と比べれば、景気拡大とはいっても実感はとぼしい。むしろ丸4年がかりの遅々とした歩みで負の資産を償却し、新しい成長路線の原点にたどり着いたというのが実態だろう。

▼にもかかわらず、政治の世界では与野党から早くも「格差社会の是正」という不思議な論調が台頭している。弱者に対するセーフティーネットの整備は確かに必要だ。しかし、不況の集中治療室からようやく這いだしたばかりの半病人にすかさず足かせをはめようという政治家の状況認識にはあきれるほかない。

▼残念ながら、世界市場で胸を張って競争力を誇れるのは、自動車と一部の設備機械、部材産業だけだ。消費の牽引役であるデジタル家電にしても、海外とのコスト競争にさらされ、国産メーカーの足場は盤石ではない。半導体、情報システムについては、世界との格差はまだまだ大きい。この追い風を天佑として、日本の主力産業がどこまで国際的な競争力を回復できるのか。今、目を向けなければならないのは、むしろ海外との格差の解消だろう。
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