▼鉄鋼業界の大型合併が注目を集めている。世界最大手のミタルが2位のアルセロールを吸収した。両社で日本の年間生産量に匹敵するという。この合併、少し見方を変えると鉄鋼に限らず日本経済にとって看過できない問題を孕んでいる。

▼合併の背後には、インド出身のミタル一族が議決権株式の98%を所有する新興企業が、伝統的な欧州の基幹産業を買収するという構図が重なっている。鉄は国家なりという古い考えに照らせば、Brics資本が欧州を呑み込んだことになる。アルセロールが最後までカナダやロシアとの合併にこだわったのも血筋の問題と無縁ではない。

▼翻って日本をみれば、今年の会社法施行で日本型経営の国際標準化はほぼ完了する。海外に評判の悪かった株の持ち合いも企業価値の計上方式も国際標準の「常識」に合わせたことで、日本企業の純血主義は通用しなくなった。村上ファンドは優良資産を持つ日本企業がいかに無防備で買い得かを天下に示してみせた。

▼少子化で国内での規模拡大が困難な日本企業にとって、国際企業の規模の論理とどう向き合うかは難しい問題だ。自動車産業では国際再編に背を向けて、世界の孤児といわれたBMWとホンダが勝ち組に踏みとどまった。規模の論理に打ち克つ技術と独創性を備えていたからだ。IT産業はどうなのか。本紙時価総額ランキングに眼を通すと今回のアルセロール買収金額で上位数社をまるごと買い漁れるという事実に暗然とする。