北斗七星

北斗七星 2006年8月7日付 Vol.1149

2006/08/07 15:38

週刊BCN 2006年08月07日vol.1149掲載

▼かつて日本の製造業は勤勉な工員に支えられていた。一日三交代で生産設備を稼働させ、安全と品質に目を配る。職場は厳格な職制と規律で成り立っていた。年長の工員は、経験に裏打ちされた職人技を誇りにしていた。

▼大手製造業の工場で、偽装請負が横行しているという。外部から派遣された労働者を現場作業に従事させることで、メーカーは採用費や人件費を節減でき、余剰人員を抱えずに済む。朝日新聞(7月31日付)によると、過去2年間に製造・組み立て作業の請負発注を行ったメーカー660社のうち、半分以上の358社が労働者派遣事業法に抵触していたという。組織だった訓練の欠如で安全責任もあいまい、「要らなくなったら簡単にクビを切れる便利な仕組み」と書かれている。

▼系列子会社の偽装請負で「労働力の使い捨て」と名指されたキヤノン、日立製作所、松下電器、東芝、トヨタ自動車などは、困惑するばかりだろう。派遣の緩和など政府が後押しした景気浮揚策批判の声があがっても、いまさら引き返すことはできない。

▼ビル清掃業、警備保障業、ソフトウェア業など13業種に制限された派遣業の対象が製造業にも拡大されたのは2004年。「エンジニアリング・アウトソーシング」を名乗り、2万人の登録社員を擁する派遣会社も登場した。頻発する工場の事故が偽装請負問題とどう関連するのか、IT業界でも分析してみるべきだろう。システム構築の現場でも同じことが起こる可能性があるからだ。
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