北斗七星

北斗七星 2006年9月25日付 Vol.1155

2006/09/25 15:38

週刊BCN 2006年09月25日vol.1155掲載

▼小泉内閣が5年5か月の政権の幕を閉じた。政治家に毀誉褒貶はつきものだが、政権の幕引き間際まで国民から50%近い支持率を得た内閣は例がない。高度成長期の政治体制が機能不全を起こすなかで、派閥によらない新しい政治手法を導入したことが国民を引きつけたのだろう。

▼評価はともかく、組織をけん引するという点では、新しいリーダーシップのあり方を提示したといえる。評判の悪い「丸投げ政治」にしても、トップが変革の意思とビジョンを頑迷なまでに表明し、具体的なプロセスは執行役以下の手腕に任せるという手法は企業経営にも通じるものがある。

▼金融再生や不況からの脱出については、民間の自助努力の結果で、小泉政権の功績ではないという見方もある。e─Japanが示した世界トップのブロードバンド環境にしても、実際に回線料金を引き下げて普及を促したのはソフトバンクの功績だ。しかし、公共投資などの旧弊を絶ち、新興勢力の台頭を阻害する規制や既得権の介入を最小限に抑えた手法は、これからの企業運営にも十分通用する。

▼問題は危機を脱して、次の成長モデルを構築する時期に求められるトップのあり方だろう。システム業界にしても、不採算案件の処理には区切りをつけたが、新しい収益モデルは十分描き切れていない。過去を清算し、新しい創造の時代にふさわしいリーダーシップとはどのようにあるべきなのか。次の一手の真価を問われているのは、政治も経済も同じだ。
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