▼日本語の乱れが指摘される折から、文化審議会の国語分科会敬語小委員会が敬語を「尊敬語」「謙譲語I」「同II」「丁寧語」「美化語」の5分類とする指針を発表した。小委員会のワーキンググループでは、尊重語、尊卑語、丁重語という分類案も出たらしい。生徒に敬語を教える際、従来の3分類では所属不明のグレーゾーンは20%だったのが、5分類なら5%に減るという。分類項目を多くすれば、グレーゾーンが減るのは当然だ。

▼国語学者や作家が鳩首して計43回、延べ160時間も議論を重ねたそうだ。丁寧な分類で最新の研究成果も盛り込まれている、という好意的な評価もあれば、かえって分かりにくくなり有効性は疑問という指摘もある。言葉は生き物で、口にする人の心のまま、という考えに立てば、分類したからといって使い方が正しくなるとは思えない。せいぜい試験に「次の敬語の分類を答えよ」というような問題が出る程度だろう。

▼ふと思い出したのは20年ほど前に流行った「ハイテク・ハイタッチ」という言葉だ。ITが浸透した社会では、人と人のコミュニケーションがますます重要になる、という意味だ。ところが実際には、面と向かって恋心を打ち明けると、交際を断られるかもしれない。それで重要な連絡も、電子メールで済ませてしまう。そのうち自動販売機が「お勘定のほう、よろしいでしょうか?」としゃべるようになるかもしれない。さて、傍点をつけた言葉は敬語5分類のどれに当たるのでしょうか。