▼内部統制の強化で、社内手続きが煩雑になったという声があちこちから聞こえてくる。規模の大小を問わず、管理体制や業務プロセスを見直す企業が増えているようだ。どうやら稟議書や報告書づくりに追われているらしい。金融商品取引法の導入を前に、日本中で同じような混乱が生じているのだろう。会計士の先生方は、「お宅の会社が遅れているからだ」と口を揃えるが、ならば株式市場の監視人たる証券会社や監査法人の法令違反が相次ぐのはなぜなのか。

▼問題は交通信号の渡り方が変わったということだろう。この10年近く、日本企業は現場への権限委譲と階層のフラット化で意思決定の迅速化と生産性の向上を図ってきた。それを後押ししたのが、ハンコを連ねた決裁文書主義に代わる社内メールの浸透だ。しかし、内部統制が求めているのは、こうしたメール文化の簡略主義とは相反する手続きの文書化や相互監視制度である。「黄色」は注意して進めでなく、確実に止まれだと頭を入れ替えなければならない。

▼経営手法のルールが変わった以上、新しい内部統制のあり方に異論を唱えているばかりでは進歩はない。しかし、米国ではSOX法対応によって、1社平均3500万ドルの対応費用がかかったという。このコストと時間をどのように競争力の向上に結びつけられるかが課題だろう。メールが企業の意思決定プロセスを変えたように、内部統制を遵守しながら、意思決定プロセスを効率化できる新しいIT活用の提案が待たれる。