【西安発】ちょっと変なのである。旅先のガイドに案内されて、「おや、変だな」と感じることがあった。

▼唐の時代に長安と呼ばれた街を歩いた。今は西安という。観光資源の発掘・整備で中国一の街になるのではないか。そんな期待を抱かせるほど、歴史の宝庫だ。秦の始皇帝の兵馬俑、鐘楼、鼓楼、西安事変と、古代から近代まで数え上げたら枚挙に暇がない。地元のガイドに道案内を依頼した。日本語の上手な中国人女性だ。27歳という。気軽な会話を楽しみながら観光スポットを巡った。

▼車であちこちを走り、よく歩いた。ガイドが後部座席を振り向いて「これで本日の予定は終了です。まだ時間がありますから、どこか行きたいところはありますか」と尋ねる。「どこかありますか」「そうですねー。弘法大師を知っていますか。日本の皆さんがよく行くところに、青龍寺(チンロースー)がありますよ。行きますか」。ということで、訪ねた。西安の城壁から南東に位置する。「ここは別料金です。80元です。いいですか」。納得して、訪ねた。寺の門をくぐる。3人の女性が小さなテーブルを囲んで話をしていた。ガイドはそのうちの1人に話しかける。その人が青龍寺の日本語ガイドだという。寺の歴史を刻んだ回廊の説明を聞きながら奥に向かう。空海記念碑が目の前に現れる。「なんだか変だな」。寺の佇まいがないのだ。「本堂はどこなの」と聞けば、よくわからない説明をして、真っ暗なお堂に入る。ドアを開けて次の間に案内する。そこはこうこうと明かりのついた部屋で、不思議な仏具、書道品が並んでいる。狭い部屋に閉じこめられた不快な気分だ。思わず、外に出た。

▼本堂は隣だという。ではここはどこ?10元のチップを要求された。手渡して、隣に向かったら、青龍寺の石碑があった。ここは無料だ。本堂ではなく空海紀念堂だ。坊主らしい人がいて、そこで線香をあげた。後で、ガイドから70元の差額を要求された。貴重な体験に感謝して、ガイド料を手渡した。成長のさなかにある街にはこうした通過儀礼がある。ソウルも、台北も、少し昔の北京もそうだった。もう一度、改めて青龍寺を訪ねてみようと思う。(BCN社長・奥田喜久男)