旅の蜃気楼

東京・下町の皐月はお祭りづくし

2008/05/19 15:38

週刊BCN 2008年05月19日vol.1235掲載

【本郷発】5月のお江戸は賑やかだ。神田祭・大神輿渡御、浅草・三社祭、湯島天満宮大祭と続くからだ。神田祭は神田明神、浅草・三社祭は浅草神社、湯島天満宮大祭は湯島天神。それぞれ名だたる神社だ。BCN編集部は湯島天神の氏子だから、毎年、若い社員が神輿の担ぎ手に借り出される。“にわか担ぎ手”だが、法被を着ると、立派な若衆に変身する。神輿を担いで「わっしょい」と声を張り上げると、なんとも頼もしい。ほれぼれしてしまう。祭りとは不思議な力を持っている。そうか、祭りは人の輝きを引き出す力を持っているんだ。

▼祭りの華は、人の輝きだと思う。神輿を担ぐ人、それを見る人、裏方で仕切る人。家でご馳走を作る人。皆が輝いている。もちろん町も輝いている。祭り好きは全国にいる。昨年、伊勢のお木曳きに出かけた折のことだ。近くに元気のいい若衆がいたから、「どの町内なの」と声をかけたら、「鈴鹿」という。鈴鹿から来ているということは、多賀大社の氏子と思える。聞けば、お互いの祭りを行き来しているらしい。「今日は応援。東京にも行くよ」。元気な祭り好きだ。東京の神輿を担ぐといえば、きっと浅草・三社祭の宮出しのことだろう。「宮出し」とは神社が所有している宮神輿をお社から氏子が担ぎ出して、氏子町内を渡御することだ。浅草神社の宮出しは、朝6時、新門の頭の音頭「ヨォー」で手打ちをして始まる。いつ見ても、かっこいい。

▼浅草神社はどこにあるかご存じですか? 日ごろは浅草寺の脇で、静かに控えている狭い境内のお社です。3基の神輿はその境内から担ぎ出され、氏子町内を渡御する。宮出しには関東一円の祭り好きが集まる。ところが、今年は中止。残念。でも来年の宮出しは価値が倍増しそうだ。さて、祭りの雰囲気には3種類がある。宮出しのように、人の力を外に向けて爆発する動と、つい先ごろ、この欄で紹介した「飛騨古川の起こし太鼓」のように、人の力を内に秘めて静で発散する形がある。もうひとつは5月15日の京都・葵祭、見せびらかす祭りだ。意外にこのタイプの祭りは多い。起こし太鼓で見せびらかしたい写真があるので、掲載します。(BCN社長・奥田喜久男)
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