北斗七星

北斗七星 2008年6月9日付 Vol.1238

2008/06/09 15:38

週刊BCN 2008年06月09日vol.1238掲載

▼6月、この春に入社した新人が集合教育を終え、現場で実戦的な訓練を受ける時期である。「私は、部下の育成にあたって常に『効率』と『効果』を念頭においてマネジメントしています」というのは、ある外資系企業の営業マネジャー。外資系といえば、何はさておき効率最優先というイメージがあるが、それを前面に出せば必ず無理が生じ、人材の芽をつぶしてしまうというのだ。効率よりもむしろ、いかに効果のある仕事ぶりを身につけさせるかに腐心しているという。

▼全国を飛び回るそのマネジャーが実践しているのは、「初めて訪ねる地方都市では、そこで一番高い場所に登って街全体を俯瞰すること」だそうだ。そうすることによっておおよその地形を把握し、町並みや産業の様子を知ることに主眼をおく。自分の目で確かめて得た情報は間違いなく商談に役立つと、肌で感じている。だから部下にも勧めている。これと同じ趣旨のことを、生涯のうち4000日間、農漁村を旅した民俗学者・宮本常一が述べているのは興味深い。「村でも町でも新しく訪ねていったところはかならず高いところへ上がってみよ、そして方向を知り、目立つものを見よ」(『民俗学の旅』講談社刊)と。人の生き様を観察する民俗学者の目は、営業の基本と通底するものがある。

▼フレッシュな気持ちで第一線に配属された新人の諸君に、トヨタグループの創業者・豊田佐吉翁の言葉を贈りたい。「障子を開けてみよ。外は広いぞ」。

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