地上デジタル放送に完全移行するまで2年半余り。地デジを推進する総務省や放送局、家電メーカーに焦燥感が漂いつつある。受信機であるフルセグチューナーは9月末で累計4100万台ほど出荷。だが、肝心のアンテナやケーブルの設置が遅れ気味なのだ。

 地デジを推進する関係者は、2011年7月の完全移行に向けての「アンテナ設置の駆け込み的な需要」を懸念する。設置工事や位置調整を請け負う電気工事の人手が一時的に足りなくなり、便乗値上げや詐欺まがいの行為が横行する恐れもある。東京の一部地区では、完全移行後、墨田区に建設中の東京スカイツリー(新東京タワー)方向へアンテナの向きを変える必要が指摘されている。


 送信用のアンテナもまだ足りない。現時点では人口の9割余りをカバーするまで建設が進んだが、これからつくるアンテナは1本あたりのカバー領域が「100-200世帯のレベル」と、普及率が100%に近づけば近づくほど小規模になる。「このままでアナログ放送を本当に止められるのか」と、関係者に悲壮感すら滲む。


 いっそのこと、インターネットや簡易式のワンセグで地デジ番組を見ることができる世帯も、「地デジ普及のなかに入れてしまってはどうか?」との意見も出ている。しかし、これだとハイビジョン映像を視聴できる地デジの最大のメリットが損なわれる。非常(異常?)事態に、背に腹はかえられぬということか。(寶)