旅の蜃気楼

“だんご3兄弟”の初山行

2008/11/03 15:38

週刊BCN 2008年11月03日vol.1258掲載

【秋田発】「紅葉を見に行こう」。この企画は早くに決まった。還暦前後の3人は山登りが共通の趣味。3人とは大手企業で働く2名と、私だ。2名はすでに還暦を迎えて現役の最前線から少し引いた立場にいる。私は年が明けたらすぐ還暦になるから、還暦予備軍だ。生まれた順番は、東芝不動産・顧問の橋文男さん、東芝ソリューション・常勤監査役の真木明さん、その次が私だから、“だんご3兄弟”とでも名づけておこう。最初に出会ったのは、1973年。ずいぶん古い仲間だ。趣味が共通していても、さすがに現役当時にはウィークデーに山登りはできなかった。

▼だんご3兄弟としては、今回が初山行だ。向かうのは秋田駒ヶ岳。現地に向かう列車の指定席で待ち合わせ、「やあやあ」の挨拶を交わした顔は、実に嬉しそう。下車駅の田沢湖に近くなると、沿線の山は紅葉に色づき、列車も徐行してくれる。「ひゃあ、きれいだね」とはしゃいで、秋田新幹線を降りる頃には高校生時代の修学旅行気分に浸っている。メンバー各人の生まれは高知、豊橋、岐阜。育ちは神戸、小樽、伊勢。東京で社会人として出会って、還暦を迎えて高校生時代に戻り、山を楽しむ。3人で山に登ることに深い楽しみを味わっている。

▼秋田駒ヶ岳の頂上付近は北風が吹いて寒かった。運の悪いことに、山に登り始めた頃から、出発地点の八合目の避難小屋兼売店に下山するまで、曇り空が続いた。1637メートルの男女岳(おなめだけ)の頂上では展望がきかず、三角点に触れて記念写真を撮る。阿弥陀池に下り、池の脇にある避難小屋で「一本入れる(休憩のこと)」。この辺りから寒さが増して、手袋を出し、合羽を着る。ここからさらに男岳の頂上を踏み、女岳を右に見て、火口の淵を歩いて大焼砂、焼森を経由して八合目に到着。避難小屋に入って、「ああ、何て幸せなんだろう」と叫んだところ、カップ麺を旨そうに啜っていた同じ年頃の先客が「ほんとに、そうだ」と相槌を打ったものだから、4人で大笑いになった。翌日の角舘でも大笑いが続いたが、この先、十数年と続きそうな勢いだから、おいおい人数も増えて、この欄にご登場いただくことになるだろう。(BCN社長・奥田喜久男)
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