北斗七星

北斗七星 2009年6月8日付 Vol.1287

2009/06/08 15:38

週刊BCN 2009年06月08日vol.1287掲載

▼あるプリンタメーカーの営業経験のある中堅社員が、いまも記憶にとどめる新人時代の「研修用VTR」がある。「てんびんの詩」。脇役俳優として知られ2000年に他界した下元勉主演の同作品は、いまも多くの企業で社員教育用に使われている。

▼ストーリーはこうだ。近江商人の家に生まれた少年が、鍋蓋のみを商材として持たされ、行商に出る。しかし、鍋の蓋だけが売れるはずもない。落ち込んだ彼は、とある農家の洗い場に置いてあった鍋を磨いて気を紛らす。そこにその家の女性が現れた。叱られるかと首をすくめる少年。だが、女の人は彼の行為に感動し、蓋を買った──。



▼前出の中堅社員は、鍋をコピー機に見立てて自らを奮い立たせた。コピー機が入っている企業へ“アポなし”で訪問し、ガラス板や機器全体を磨き、そこから消耗品の注文を得るなど、新たな営業手法を体得したのだ。昨今は、Web経由で何でも買えてしまう時代。しかし、ITを活用できていない中小企業ほど、対面で相談できる相手を欲している。「てんびんの詩」は、そんな営業の原点を教えてくれている。

▼厚労省の医薬品販売を巡る検討が終了し、一般用医薬品(大衆薬)のネット販売に規制がかけられた。医薬品には副作用の危険性があるが、体の不自由な人や離島に住む人などにはネット販売の利便性は捨てがたい。Web会議で薬剤師とつなぎ、仮想的な対面販売をする術はないものだろうか。売買は心が通って初めて成り立つからだ。
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