BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『最新ケータイを支える技術 ~超薄型・高性能の裏側をのぞく』

2009/09/29 15:27

週刊BCN 2009年09月28日vol.1302掲載

 携帯電話の世界シェアをみると、トップ3はノキア、モトローラ、サムスン電子。この3社で7割のシェアを占めるといわれ、日本メーカーの存在感はきわめて薄い。日本という特定の市場でしか“棲息”できないことから、「ガラパゴス商品」と揶揄されたりする。

 だが、日本の携帯電話は本当に敗北しているのか? 家電やIT機器が作り出される現場を取材し続けてきた著者は、「日本の携帯電話ビジネスは大きな曲がり角にさしかかっているのは疑いようがない。しかし、携帯電話を作る人々が負けたとは思えない」とみる。

 日本の携帯電話ビジネスには大きな特色がある。その特色を形づくっているのは「キャリア」の存在だ。私たちが普段目にする携帯電話機は、メーカーとキャリアが「合作」したものなのだ。この本は、メーカーの開発現場に焦点をあて、エンジニアなどの声を織り交ぜながら論を展開している。キャリアから寄せられる「より洗練されたデザインに」「より高機能に」といった要望に、真摯に応えようとする開発現場の人々の姿がリアルに伝わってくる。

 “モノづくりニッポン”の看板が揺らいでいるともいわれるが、まだまだ大丈夫と勇気づけられる。とはいえ、課題もある。「『細やかな配慮を生かした製品を作る』という日本の良さを残したまま、『日本の携帯電話』は変われるのか。これからの成長は、そこにかかっている」と著者は結論づける。(止水)

『最新ケータイを支える技術 ~超薄型・高性能の裏側をのぞく』
西田 宗千佳著 技術評論社刊(1580円+税)

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