北斗七星

北斗七星 2010年3月29日付 Vol.1327

2010/04/08 15:38

週刊BCN 2010年04月05日vol.1328掲載

▼シャープの町田勝彦・会長兼CEOとNTT西日本の森下俊三・取締役相談役が、産経新聞に寄稿した日本経済の成長戦略に対する要望は興味深い。経済成長と地域再生の実現が急務であり、科学技術の研究成果を「素早く産業化」へと結びつけることの重要性を説いている。

▼これまで日本政府は、科学技術研究に毎年巨費を投じてきた。なかには、世界を瞠目させるイノベーションもあったが、この基礎研究を応用した産業化への道筋が未整備で、せっかくの研究も埋もれてしまっているという主張とみられる。鳩山政権は、「仕分け作業」を通じて科学研究費を圧縮。一方で、「地域再生」を掲げながら具体策はみえていない。両氏は、こうした政権運営に警鐘を鳴らしているに違いない。

▼日本のソフトウェア産業は、同じように「地域再生」がカギを握る。ソフト開発の下請け工程は中国などでのオフショア開発に振り向けられ、クラウドの普及によって受託ソフト開発案件は減る一方。地域のソフトベンダーの多くが、大手SIerからの下請けに成り立っている。このまま放置すれば、地域のソフト産業は壊滅するだろう。

▼だが、地域ソフト会社は、大手に勝るとも劣らない技術者集団が多い。オフショアと比べても「人月単価」はさほど変わらない。にもかかわらず、こぞって海外へ下請け先を求める大手。日本のソフト産業の再生には、この海外流出を食い止め、地域ソフト会社を生かした「ものづくり」を再考すべきだ。
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